【法改正対応】自転車「青切符」で企業に求められる対応とは?
- 大澤労務管理事務所
- 5月2日
- 読了時間: 8分
更新日:5月11日

安全教育・自転車通勤規程・賠償保険
経営者が押さえるべき実務ポイント
【2026年4月施行 改正道路交通法対応】
2026年4月、自転車にも「青切符」が導入されました。
改正道路交通法の施行により、自転車の交通違反にも反則金制度が適用されるようになりました。信号無視やながらスマホなど、日常的に見られる違反行為が、反則金の対象となります。
これは個人の問題にとどまりません。通勤中や業務中に従業員が自転車で事故を起こした場合、企業の安全配慮義務や使用者責任が問われるリスクがあります。
本記事では、青切符制度の概要から、企業が取り組むべき安全教育、自転車通勤規程の整備、賠償保険の備えまでを体系的に解説します。
この記事でわかること● 自転車「青切符」制度の仕組みと対象違反 ● 青切符と赤切符の違い・主な違反行為と反則金 ● 従業員の違反・事故が企業に及ぼすリスク ● 安全教育の具体的な実施方法 ● 自転車通勤規程の導入・見直しチェックリスト ● 事故発生時の対応フローと賠償保険の選び方 |
1. 自転車「青切符」制度とは何か
交通反則通告制度(青切符)とは、比較的軽微な交通違反に対して、反則金を納めることで刑事手続きを経ずに処理を完了できる仕組みです。これまで自動車に適用されていたこの制度が、2026年4月1日から自転車にも拡大適用されました。
【導入の背景】
自転車の交通違反はこれまで「赤切符」(刑事手続き)でしか処理できず、書類作成や警察への出頭など手続きの負担が大きい一方、実際には不起訴となるケースが多く、違反者への責任追及が不十分でした。自転車関連の死亡・重傷事故のうち約4分の3に自転車側の法令違反があることもあり、より実効的な取り締まりの手段として青切符が導入されました。
【青切符と赤切符の違い】
項目 | 青切符(新設) | 赤切符(従来) |
対象 | 比較的軽微な交通違反(約113種類) | 悪質・危険な重大違反 |
対象年齢 | 16歳以上 | 年齢制限なし(16歳未満でも適用あり) |
処理方法 | 反則金を納付すれば手続き完了 | 刑事手続き(裁判) |
前科 | つかない | 有罪確定で前科あり |
反則金の目安 | 5,000円〜12,000円 | 罰金(金額は裁判で決定) |
▶注意
青切符が導入された後も、悪質・危険な違反や重大事故については従来どおり赤切符による刑事手続きが行われます。
【主な違反行為と反則金】
違反行為 | 反則金 |
ながらスマホ(携帯電話使用等) | 12,000円 |
信号無視 | 6,000円 |
一時不停止(止まれの標識) | 5,000円 |
右側通行(逆走) | 6,000円 |
遮断踏切への立入り | 7,000円 |
通行区分違反(車道通行違反等) | 6,000円 |
ブレーキ不良自転車の運転 | 6,000円 |
【検挙の基本方針】 自転車の交通違反に対しては、基本的にまず指導警告が行われます。青切符による検挙は、悪質・危険な違反と判断された場合に行われます。ただし、警察官の警告を無視して違反を続けた場合や、他の車両・歩行者に具体的な危険を生じさせた場合は、初回でも検挙の対象となります。 |
2. 従業員の自転車違反・事故が企業に及ぼすリスク
自転車通勤や業務利用には、従業員の健康増進・通勤時間の短縮・交通費削減といったメリットがあり、国も自転車通勤の普及を推進しています。しかし、青切符の導入により「個人のマナーの問題」では済まされない法的リスクが明確になりました。
【安全配慮義務】
企業には労働契約法上の安全配慮義務があり、従業員が安全に通勤・就業できる環境を整える責任があります。自転車の安全教育を怠り、その結果従業員が事故に遭った場合、義務違反を問われる可能性があります。
【使用者責任(民法715条)】
業務中の自転車事故で従業員が第三者に損害を与えた場合、企業は使用者責任を問われ、損害賠償責任を負うことがあります。通勤中の事故であっても、自転車通勤を会社が認めている(黙認含む)場合は、企業の管理責任が問われるリスクがあります。
【高額賠償のリスク】
自転車事故では、加害者に数千万円規模の賠償命令が出るケースも実際に発生しています。従業員個人だけでなく、企業にも賠償責任が及ぶ場合があるため、保険による備えが不可欠です。
3. 企業が実施すべき安全教育
従業員を交通違反や事故から守るためには、「何が違反になるのか」という正しい知識を周知することが不可欠です。
【自転車安全利用五則の周知】
内閣府・警察庁が定める「自転車安全利用五則」は、すべての自転車利用者が守るべき基本ルールです。
● 車道が原則、左側を通行(歩道は例外)
● 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
● 夜間はライトを点灯
● 飲酒運転は禁止
● ヘルメットを着用(努力義務)
【安全教育の具体的な実施方法】
方法 | 内容 | 頻度の目安 |
社内研修・勉強会 | 交通ルール・事故事例・罰則を解説。警察庁の動画教材の活用も有効 | 年1回以上(4月・10月の全国交通安全運動に合わせるのがおすすめ) |
社内通知・掲示 | ポスター・メール・チャットで交通安全情報を定期配信 | 月1回程度 |
eラーニング | 警察庁の交通安全教育教材をオンラインで受講 | 入社時+年1回 |
外部講師の招聘 | 警察署や損害保険会社による出前講座の活用 | 年1回 |
4. 自転車通勤規程の導入・見直しチェックリスト
自転車通勤を「個人の裁量」に任せたままにしていませんか? 企業として適切に管理するためには、社内ルールの明文化が不可欠です。
【規程に盛り込むべき項目】
✓ 自転車通勤の許可制(届出・申請手続き)
✓ 通勤経路の届出と承認
✓ 自転車損害賠償責任保険等への加入義務(自治体の条例も確認)
✓ ヘルメット着用のルール(努力義務だが、企業として着用を推奨・義務化する判断も)
✓ 駐輪場所の指定・管理
✓ 自転車の整備・点検義務(年1回以上の点検推奨)
✓ 通勤手当の扱い(公共交通機関との併用ルール含む)
✓ 安全教育の受講義務
✓ 事故発生時の報告義務と対応フロー
✓ 飲酒運転・ながらスマホ等の禁止事項の明記
✓ 規程違反時の懲戒処分の定め
▶規程のテンプレート
国土交通省の「自転車通勤導入に関する手引き」に、自転車通勤規程や許可申請書のテンプレートが掲載されています。
5. 事故発生時の対応フローと賠償保険
【事故発生時の対応フロー】
万が一事故が発生した場合に備え、対応マニュアルを作成し、従業員に周知しておくことが重要です。
順序 | 対応内容 |
① | 負傷者の救護と安全確保 |
② | 警察への通報(110番) |
③ | 救急車の要請(119番)── 負傷者がいる場合 |
④ | 相手方の情報確認(氏名・住所・連絡先・保険情報) |
⑤ | 事故現場の状況記録(写真撮影など) |
⑥ | 会社への連絡(上司・総務部門) |
⑦ | 保険会社への連絡 |
【自転車損害賠償責任保険等への加入】
自転車事故で数千万円規模の賠償命令が出るケースもある中、保険加入は企業・従業員双方にとって必須の備えです。
【条例による加入義務化の状況】 多くの自治体が条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化または努力義務としています。自社が所在する自治体の条例を確認し、義務化されている場合は企業・従業員ともに加入が必要です。 |
▶保険選びのポイント
保険の種類によって補償範囲や限度額が異なります。個人賠償責任保険、自転車保険(専用)、TSマーク付帯保険、事業者向け施設賠償責任保険など、自社の利用状況に合った保険を選定しましょう。
6. 経営者が今すぐ取り組むべきアクション
青切符の導入は、企業にとって自転車利用のルールを整備する好機です。以下のアクションリストで、自社の対応状況を確認してみてください。
優先度 | アクション | 担当 |
高 | 自転車通勤規程の制定・見直し | 総務・人事 |
高 | 自転車損害賠償責任保険の加入状況を確認 | 総務・経理 |
高 | 従業員への青切符制度の周知(社内研修・配布資料) | 人事・管理職 |
中 | 事故発生時の対応フロー作成・周知 | 総務・安全衛生 |
中 | 就業規則への自転車関連条項の追加 | 総務・社労士 |
中 | 自治体の条例(保険加入義務等)の確認 | 総務 |
低 | 「自転車通勤推進企業」宣言等の外部認定の検討 | 経営企画 |
まとめ
2026年4月の改正道路交通法により、自転車にも青切符制度が導入されました。これは単なる交通ルールの変更ではなく、企業の安全管理体制が問われる転換点です。
経営者として取り組むべきことは大きく3つあります。
✓ 安全教育の実施── 何が違反になるかを全従業員に周知する
✓ 自転車通勤規程の整備── 個人任せにせず、企業として管理する体制を構築する
✓ 賠償保険の備え── 高額賠償リスクに備え、企業・従業員双方で保険に加入する
自転車利用のメリットを活かしながらリスクを最小限に抑えることが、従業員の安全と企業の信頼を守る経営判断につながります。
※ 本記事の末尾では、従業員への配布用資料「自転車の交通ルールの変更」もご用意しています。社内周知にご活用ください。
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