【基礎知識】代休と振替休日の違いとは? 割増賃金の要否と正しい運用方法
- 大澤労務管理事務所
- 7月24日
- 読了時間: 7分

法定休日・所定休日の基本から、
給与計算のパターン別解説、導入手順まで
「代休を与えたから割増賃金は不要」──これ、間違いです。
代休と振替休日は似た印象を持たれがちですが、まったく異なる制度です。どちらを使うかで割増賃金の要否が変わるため、混同すると「休日労働をしたのに割増賃金が支払われない」という法令違反やトラブルにつながります。
本記事では、前提となる法定休日・所定休日の違いから、代休と振替休日の比較、パターン別の給与計算、制度導入の手順までを体系的に整理します。
この記事でわかること ● 法定休日と所定休日の違いと割増率 ● 代休と振替休日の違い(一覧比較) ● 代休取得時の給与計算──割増賃金は消えない ● 振替休日の給与計算──同一週内かどうかがカギ ● それぞれの制度導入に必要な整備(就業規則・36協定) ● 運用ミスを防ぐ勤怠管理のポイント |
1. 前提知識──法定休日と所定休日の違い
代休・振替休日を理解するには、まず「休日の種類」の整理が必要です。企業が定める休日には2種類あります。
種類 | 内容 | 休日労働時の割増率 |
法定休日 | 法令により定められた休日。週1日または4週4日以上の付与が義務 | 35%以上(休日労働) |
所定休日(法定外休日) | 法定休日とは別に、就業規則等で独自に定めた休日 | 休日労働ではなく時間外労働として扱う。法定労働時間(週40時間)以内なら割増なし、超えれば25%以上 |
例:土日休みの企業で日曜を法定休日と定めている場合──日曜出勤は35%以上の割増、土曜出勤は週40時間を超えた分について25%以上の割増となります。 |
2. 代休と振替休日の違い──早わかり比較
項目 | 代休 | 振替休日 |
休日の指定タイミング | 休日労働の後に代わりの休日を与える | 休日労働の前にあらかじめ休日を振り替える |
休日労働の扱い | 休日労働になる | 休日労働にならない(労働日と休日が入れ替わるため) |
割増賃金(法定休日の場合) | 35%以上の割増賃金が必要 | 割増賃金は原則不要(※同一週内の振替の場合) |
就業規則への規定 | 規定が望ましい(取得ルールの明確化) | 規定が必須 |
従業員への通知 | ─ | 前日までに通知が必要 |
【最重要ポイント】 代休は「休日労働をした後」の措置なので、割増賃金の支払義務は消えません。代休を与えても、法定休日労働の35%割増分は支払う必要があります。一方、振替休日は「事前に」休日と労働日を入れ替えるため、そもそも休日労働が発生しません。この違いが割増賃金の要否を分けます。 |
3. 代休の運用と給与計算
■代休の基本
代休とは、休日出勤した従業員に対して後日、代わりの休日を与えることです。法令上の義務ではありませんが、疲労回復・健康維持・長時間労働の抑制の観点から、代休の取得を促すことが望ましいとされています。
■代休取得時の給与計算──パターン別
代休を取得しても、休日労働時点で発生した賃金の支払義務は消えません。給与計算のポイントをパターン別に整理します。
パターン | 支払う賃金 |
法定休日に労働 → 同じ給与計算期間内に代休取得 | 休日労働の賃金(135%)を支払い、代休日の賃金(100%)を控除 → 実質35%分の追加支払い |
法定休日に労働 → 翌月以降に代休取得 | 当月:休日労働の賃金(135%)を全額支払い / 代休取得月:代休日の賃金(100%)を控除 |
所定休日に労働(週40時間超)→ 代休取得 | 時間外労働の賃金(125%)を支払い、代休日の賃金(100%)を控除 → 実質25%分の追加支払い |
所定休日に労働(週40時間以内)→ 代休取得 | 通常賃金(100%)を支払い、代休日の賃金(100%)を控除 → 追加支払いなし |
▶実務のコツ
代休の取得日は企業が一方的に決めるのではなく、従業員との協議で決めます。代休申請書を利用し、「代休日は無給(賃金控除の対象)であること」を事前に伝えて合意を形成しておくと、トラブル防止につながります。
■代休を付与するための整備
✓ 36協定の締結・届出(休日労働・時間外労働をさせる可能性がある場合は必須)
✓ 就業規則に休日労働・時間外労働をさせることがある旨を規定
✓ 代休の取得手続き・取得期限などの運用ルールを就業規則に明記
4. 振替休日の運用と給与計算
■振替休日の基本
振替休日とは、あらかじめ休日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日として振り替える制度です。事前に入れ替えるため、元の休日に労働しても休日労働にはなりません。
■振替休日の給与計算──「同一週内かどうか」がカギ
パターン | 賃金の取扱い |
同一週内での振替 | 週1日の休日が確保され週40時間以内に収まるため、追加の賃金支払いは発生しない |
異なる週への振替(同じ給与計算期間内) | 労働した週の労働時間が週40時間を超えた分について、25%以上の割増賃金が発生する |
翌月の給与計算期間への振替 | 当月:割増賃金を含めて支払い / 翌月:振替休日の通常賃金分(100%)のみ控除。当月に発生した割増賃金分まで控除することはできない |
【よくある間違い】 「振替休日にすれば割増賃金は一切発生しない」は誤解です。異なる週へ振り替えた場合、週40時間を超えた分の時間外割増(25%以上)が発生します。振替のタイミングによって賃金計算が変わる点に注意してください。 |
■休日を振り替える際の4つの措置
✓ 就業規則に振替休日の制度を規定すること(必須)
✓ 振替休日をあらかじめ特定すること
✓ 振替休日は、労働日となった日にできるかぎり近い日(週1日または4週4日の休日が確保される範囲)にすること
✓ 従業員に対して、前日までに振替を通知すること
▶36協定について
同一週外への振替を可能とする場合は時間外労働が発生する可能性があるため、36協定の締結・届出が必要です。
5. 運用ミスを防ぐ勤怠管理のポイント
代休・振替休日の運用ミスは、以下のような法令違反につながります。
● 法定休日の労働に代休を付与したのに、誤って振替休日として処理し、35%の割増賃金が未払いになっている
● 振替休日として特定した日に、従業員が勤務してしまっている
従業員数が増えるほど取得状況の管理は煩雑になります。代休・振替休日の管理に対応した勤怠管理システムの活用も検討しましょう。
なお、休日労働・時間外労働の管理は長時間労働の抑制と直結します。労働時間の適正な把握と36協定の管理については「過労死を防ぐために企業が取り組むべき6つの対策」もあわせてご覧ください。
代休・振替休日の運用チェックリスト
✓ 法定休日と所定休日を就業規則で明確に区別しているか
✓ 36協定を締結・届出しているか
✓ 就業規則に振替休日の制度を規定しているか(振替休日を使う場合は必須)
✓ 代休の取得手続き・取得期限のルールを定めているか
✓ 振替休日は前日までに従業員へ通知しているか
✓ 代休と振替休日で割増賃金の計算を正しく区別しているか
✓ 翌月への振替時、割増賃金分まで控除していないか
✓ 代休・振替休日の取得状況を勤怠管理で正確に把握できているか
✓ 従業員に制度の違いを周知しているか
まとめ
代休と振替休日は、「休日の指定が事後か事前か」という違いにより、割増賃金の要否が大きく変わる制度です。特に「代休を与えれば割増賃金は不要」という誤解は、未払い賃金という法令違反に直結します。
制度を正しく運用するには、就業規則への規定、36協定の締結、従業員への周知、そして正確な勤怠管理の4つが不可欠です。従業員からの「休日出勤したのに割増がつかない」という誤解・不満を防ぐためにも、制度の違いを社内に周知しておきましょう。
休日制度の設計や給与計算のチェックに不安がある場合は、社会保険労務士へご相談ください。
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