【令和8年熊本地震】従業員・企業向け支援制度のまとめと心のケア
- 大澤労務管理事務所
- 8月18日
- 読了時間: 10分

失業手当の特例・未払賃金立替払・雇用調整助成金・受診特例・金融支援まで一覧で整理
令和8年熊本地震により被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
被災された皆様の安全と、一日も早い復興を心からお祈りしております。現在も復旧活動が続いている状況です。まずは安全確保等を最優先とし、落ち着いて行動できる状況になってから、以下の支援情報をご確認ください。
地震の発生を受け、各省庁から従業員・企業向けの支援策が公表されています。本記事では、現在公表されている情報をもとに各支援策を整理するとともに、災害時に知っておきたい「心のケア」についてもまとめています。
【掲載情報について】
本記事の支援制度は2026年8月5日時点の公表情報に基づきます。激甚災害の指定など、今後も支援策は追加・更新される可能性があります。最新情報は必ず各省庁のサイトでご確認ください。
この記事でわかること ● 従業員向け支援(失業手当の特例措置・未払賃金立替払制度) ● 企業向け支援(雇用調整助成金・中退共の特例措置) ● マイナ保険証等がなくても受診できる特例 ● 国税の申告・納付等の期限延長 ● 被災した中小企業・小規模事業者への金融支援 ● 災害時の心のケア──「気付く・つなぐ」体制のつくり方 |
1. 従業員向けの支援
■失業手当(雇用保険の基本手当)の特例措置
今回の地震により、熊本県の一部地域では災害救助法が適用されました。これに伴い、地震災害により勤務先が直接被害を受け、一時的に離職した場合に失業手当を支給する特例措置が実施されています。
項目 | 内容 |
特例の趣旨 | 災害により事業所が休止・廃止したために一時的に離職を余儀なくされた方に、失業手当を支給する |
対象地域 | 熊本県内の災害救助法適用市町村(対象市町村は厚生労働省の資料でご確認ください) |
受給手続き | ハローワークで柔軟な対応(必要書類の取扱いなど)が行われている場合があります |
▶企業側の対応
災害を受けやむを得ず休業する企業は、従業員の生活を守るためにも、このような支援の利用を案内し、必要な手続きを進めることが考えられます。手続き方法に迷う場合は、最寄りのハローワークへご相談ください。
【激甚災害の指定見込み】 令和8年熊本地震は激甚災害に指定される見込みです。指定されると特例措置が追加される可能性があります。最新情報は厚生労働省のサイトでご確認ください。 |
■未払賃金立替払制度──手続きの簡略化
勤務先が地震により被害を受けて倒産状態となり、賃金が支払われないまま退職することとなった場合に、国が企業にかわって未払賃金額の一部を立替払する制度が利用できます。
項目 | 内容 |
立替払の範囲 | 未払賃金(退職手当を含む)のうち一定範囲(8割相当額) |
対象企業 | 中小企業。法律上の倒産手続きを取っている場合は大企業も対象 |
国の求償 | 国が立て替えた賃金は、後日、国から企業に求償される |
被災地域の特例 | 今回の地震による被災地域の方は、申請手続きの簡略化が行われています |
2. 企業向けの支援
■雇用調整助成金
企業向けの支援として、雇用調整助成金をはじめとした雇用関係助成金を活用できる場合があります。
【「災害だから対象」ではない点に注意】 通常の雇用調整助成金は、災害の発生そのものを支給要件とする制度ではなく、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、休業等を行った場合に対象となる制度です。地震の被害を受けた場合でも、その影響が「経済上の理由」に該当しないなど、個別の事情によっては対象とならないことがあります。 |
過去の災害時には、支給要件の緩和や助成率の引上げなどの特例措置が講じられた例がありますが、今回の地震に関する特例措置は、2026年8月5日時点で正式な公表は確認されていません。活用を検討する場合は、最新の公表情報を確認のうえ、最寄りの労働局やハローワークへの相談をおすすめします。
■中小企業退職金共済制度(中退共)の特例措置
項目 | 内容 |
掛金納付期限の延長 | 共済契約者(事業主)の申出により、一般の中退共の掛金の納付期限を最長1年間延長できる(2026年8月分〜2027年7月分) |
申出の方法 | 郵送またはFAX |
後納割増金の免除 | 延長した月分の掛金を2027年8月〜2028年7月に納付すれば、後納割増金が免除される |
■相談先──特別労働相談窓口(熊本県)
地震の影響による労働相談に対応するため、熊本労働局管内のハローワークなどに「特別労働相談窓口」が設置されています。ここまで紹介した各支援について相談したい場合は、以下のサイトの問い合わせ先をご確認ください。
▶今後の追加支援について
令和6年能登半島地震・豪雨災害の際には、厚生年金保険料等や労働保険料等の納期限延長などの措置も取られました。情報は随時更新されるため、厚生労働省のサイトから最新情報をご確認ください。
3. マイナ保険証等がなくても受診できる特例
協会けんぽは、今回の地震を受けて、マイナ保険証・資格確認書がなくても医療機関を受診できると周知しています。被災に伴いマイナ保険証等を紛失した場合や、自宅に残したまま避難した場合でも、医療機関の窓口で以下の4項目を申し出ることで受診できます。
No. | 申し出る項目 |
① | 氏名 |
② | 生年月日 |
③ | 連絡先(電話番号) |
④ | 勤務先の事業所名 |
この取扱いの適用を受けられるのは、災害救助法が適用される市町村です。該当地域で避難生活を送っている従業員や、マイナ保険証等を持ち出せなかった従業員がいる場合は、この取扱いを案内できるようにしておくと安心です。なお、協会けんぽ以外の健康保険組合に加入している企業は、加入する健康保険組合にご確認ください。
マイナ保険証・資格確認書の平時の取扱いについては「マイナ保険証に完全移行──企業の実務はどう変わった?」で解説しています。
4. 国税の申告・納付等の期限延長
国税庁は、熊本県八代市、宇土市、宇城市および八代郡氷川町に納税地のある方について、国税に関する申告、申請、請求、届出等の書類提出および納付等の期限を延長する(地域指定)ことを公表しています。詳細・最新情報は国税庁のサイトからご確認ください。
5. 被災した中小企業・小規模事業者への金融支援
経済産業省は、被災した中小企業・小規模事業者に対して以下の支援措置を実施することを公表しています。
支援措置 | 概要 |
① 特別相談窓口の設置 | 被災地域の政府系金融機関・商工会議所等に相談窓口を設置 |
② 災害復旧貸付等の実施 | 事業所復旧のための融資 |
③ セーフティネット保証4号の適用 | 信用保証の別枠化 |
④ 既往債務の返済条件緩和等 | 返済猶予など既存の借入への柔軟な対応 |
⑤ 小規模企業共済災害時貸付の適用 | 共済契約者への低利貸付 |
6. 心のケアのために知っておきたいこと
災害時は支援制度の活用だけでなく、従業員の心身の健康への配慮も重要です。大規模な災害は、被災した方だけでなく、支援にあたる方や報道に接した方にも大きなストレスを与えます。災害発生直後にとどまらず、数日後から数か月後にかけて心身に変化が現れることもあるため、従業員の様子を継続的に見守ることが大切です。
■災害後には心身の不調が現れることがある
災害を経験した後には、不眠や食欲不振、集中力の低下、強い不安、出来事を何度も思い出すなど、さまざまな心身の反応が現れることがあります。こうした反応は、災害という強いストレスを受けたときに起こり得る自然な反応です。一方で、症状が長く続いたり、日常生活や仕事に支障が出たりする場合には、医師やカウンセラーなどの専門家へ相談することが重要です。
■「気付く・つなぐ」体制を意識する
厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、メンタルヘルス対策として「4つのケア」の考え方が示されています。
ケア | 担い手 | 内容 |
セルフケア | 従業員本人 | ストレスへの気付き、ストレスへの対処 |
ラインケア | 上長・管理監督者 | 部下の「いつもと違う」変化への気付き、相談対応、職場環境の改善 |
事業場内のケア | 産業保健スタッフ等 | 従業員・管理監督者への支援、具体的なメンタルヘルス対策の企画立案 |
事業場外のケア | 外部の専門機関 | 事業場外資源(医療機関・相談窓口等)によるサービスの活用 |
▶災害時のポイント
上長や管理監督者が「いつもと様子が違う」といった変化に気付いたら、無理に励ましたり一人で抱え込んだりするのではなく、必要に応じて産業保健スタッフ等や社外の相談窓口へつなぐことが大切です。
産業医・産業保健スタッフとの連携体制については「産業医の選任義務とは? 50人以上の事業場が知るべき要件と手続き」もあわせてご覧ください。
■平時から相談できる環境をととのえておく
災害時は、被災した従業員だけでなく、上長や管理監督者、労務担当者自身も大きな負担を抱えることがあります。社内の相談窓口や産業保健スタッフ等の連絡先を周知しておくほか、必要に応じて以下のような外部相談窓口も案内できるようにしておくと安心です。
外部相談窓口 | 内容 |
産業保健総合支援センター | 事業場のメンタルヘルス対策への無料相談・支援 |
こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556 |
なお、災害時の休業手当の判断や非常時払いなど、平時に整理しておくべき災害時の労務対応ルールについては「災害時、会社は休業手当は払う? 払わない?──自然災害の労務管理Q&A」で詳しく解説しています。
おわりに
令和8年熊本地震の発生を受け、各省庁でさまざまな支援策が公表されています。支援制度は今後も追加・更新される可能性があるため、最新情報の確認を続けるとともに、自社で活用できる支援かどうかは社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
災害発生時には従業員だけでなく、管理監督者や労務担当者自身もストレスを受けている場合があります。「自分は大丈夫」と過信せず、無理を重ねないことが何より重要です。
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