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【2026年版】災害時、会社は休業手当は払う? 払わない?──自然災害の労務管理Q&A

  • 大澤労務管理事務所
  • 2 日前
  • 読了時間: 8分
自然災害の被災地でヘルメット姿の2人が倒壊家屋を見つめる、「自然災害への対応完全ガイド」とBCP見直しを訴える告知画像。

休業手当・非常時払い・

時間外労働の特例・労災認定・

保険料猶予まで一挙解説


「台風で休業にしたが、休業手当は必要?」──即答できますか?

南海トラフ地震や首都直下型地震の切迫性が指摘されるなか、災害時の労務対応をその場の判断に頼ると、対応のばらつきや意思決定の遅れが生じ、従業員の不信感や安全リスクにつながります。

本記事では、災害時に必ず直面する5つの労務論点──休業手当、給与の非常時払い、時間外労働の特例、労災認定、保険料の納付猶予──を、事前の備え(防災対策・BCP)とあわせて整理します。


この記事でわかること


●    企業防災の2つの柱(防災対策とBCP)

●    災害による休業時の休業手当──「不可抗力」の判断基準

●    従業員から請求されたら断れない「給与の非常時払い」

●    36協定の上限を超えられる例外(労基署の許可)

●    災害時のケガは労災になるのか(業務災害・通勤災害の判断)

●    社会保険料・労働保険料の納付猶予制度




1. 事前の備え──企業防災の2つの柱


企業の事業活動は「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つの経営資源に支えられており、災害時にはこれらすべてが制約を受ける可能性があります。企業防災は、以下の2つの柱で構成されます。


目的

具体的な取り組み

① 防災対策

ヒト・モノを守る

事業所の耐震化、オフィス家具・機器の転倒防止、水・食料の備蓄、避難経路の確認、安否確認手段の整備

② 事業継続(BCP)

事業を止めない・早期復旧する

事業継続計画(BCP)の策定と定期的な見直し



■BCP策定の5つのステップ

ステップ

内容

① 基本方針の明確化

事業継続に対する自社の考え方を整理する

② リスクの想定

事業中断による影響、想定される災害とリスクを洗い出す

③ 重要業務の選定

優先的に復旧すべき製品・サービスを特定する

④ 目標復旧時間の設定

重要業務をいつまでに復旧させるか、許容時間・水準を見極める

⑤ 必要リソースの確保

重要業務に必要な最低限のリソースを特定し、情報のバックアップ、非常時の電源・通信手段などの確保策を検討する


▶BCP策定のメリット

被害の抑制・早期復旧に加え、供給責任・雇用責任を果たす姿勢が社会的信用や市場評価の向上につながります。内閣府も防災対策を盛り込んだBCPの策定を推奨しています。




2. 災害による休業──休業手当の支払いは必要か


災害時に最も判断に迷うのが「休業手当」です。企業の判断で休業する場合、その休業が「不可抗力」によるものかどうかが、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払義務を左右します。



■「不可抗力」と認められる2つの条件

以下の2条件をいずれも満たす場合、不可抗力による休業として休業手当の支払義務が免除されます。

条件

内容

① 外部起因性

その原因が事業の外部より発生した事故であること

② 防止不可能性

事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること



■ケース別の判断例

ケース

休業手当の支払義務

地震・台風・豪雨で事業所が直接被害を受けて操業できない

生じない可能性が高い(不可抗力に該当)

大規模停電・計画停電により操業できない

生じない可能性が高い(不可抗力に該当)

計画停電の区域外・時間帯以外の休業

原則として支払義務あり

事業所に直接被害はないが、企業の自主判断で休業

不可抗力とはいえず、支払義務が生じる可能性が高い

企業は休業を命じていないが、従業員本人の判断で欠勤

原則ノーワーク・ノーペイ(ただし就業規則の定めや個別事情による)


【判断に迷ったら】

不可抗力に該当するかは個別の状況により判断が分かれます。「事業所に直接の被害がないのに休業する」ケースは特に判断が難しいため、就業規則に災害時の休業ルールをあらかじめ定めておくこと、判断に迷う場合は労働基準監督署や社会保険労務士に確認することをおすすめします。




3. 給与の非常時払い──従業員から請求されたら断れない


労働基準法第25条により、災害等の非常時の費用に充てるため従業員から請求があった場合、企業は給与の支払期日前であっても、すでに働いた分の給与を支払わなければなりません。

項目

内容

対象となる災害

地震、台風、洪水など

請求できる人

従業員本人、又は従業員の収入で生計を維持する親族が被災した場合の従業員

支払う範囲

すでに働いた分の給与(既往の労働に対する賃金)

前借りへの対応

将来の労働分(前借り)に応じる義務はない

支払のタイミング

請求を受けたら遅滞なく支払う




4. 災害対応の時間外・休日労働

─36協定の上限を超えられる例外


災害直後も、過重労働による健康障害防止のため、原則として36協定の上限は遵守します。ただし、以下の要件を満たす場合、例外的に上限を超えた労働が認められます(労働基準法第33条)。

項目

内容

要件

災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることができない事由により、臨時の必要がある場合

手続き

労働基準監督署長の許可(事態急迫で許可を受ける余裕がない場合は、事後に遅滞なく届出)

認められる例

被害を受けたライフライン・道路交通の早期復旧対応、人命や社会全体の安全を守るための協力要請に応じる場合 等

認められない例

単なる業務の繁忙



災害対応時であっても、従業員の健康管理は企業の重要な責務です。長時間労働による健康障害の防止については「過労死を防ぐために企業が取り組むべき6つの対策」をあわせてご覧ください。




5. 災害時のケガは労災になるのか


■業務災害の判断

自然災害による被災は、業務との相当因果関係が認められない場合、業務災害に該当しないことがあります。ただし、以下のような「災害を受けやすい特別な環境・状況」がある場合は、業務災害と認定されるケースがあります。


●    作業場所の立地条件(崖の近く、河川沿いなど災害リスクの高い場所での作業)

●    作業条件・作業環境(屋外作業、高所作業など)

●    事業所施設の状況(耐震性の低い建物での就業など)



■通勤災害の判断

ケース

通勤災害の該当性

通常の通勤経路・方法による通勤中に被災

該当する可能性がある

企業が休業・出勤停止を指示したのに、従業員が自らの意思で出勤して被災

「就業に関する移動」とみなされない可能性がある


▶経営者の視点

災害時に「出社すべきか否か」の判断を従業員任せにすると、労災認定の場面でもトラブルになります。気象警報レベルに応じた出社基準をあらかじめ就業規則や災害対応マニュアルに定めておくことが、従業員の安全と企業のリスク管理の両面で有効です。




6. 社会保険料・労働保険料の納付猶予制度


災害により保険料の納付が困難になった場合、企業からの申請により納付の猶予を受けられる場合があります。

保険料

参考情報

社会保険料(厚生年金保険料等)

日本年金機構『厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)』

労働保険料

厚生労働省『労働保険料等を一時に納付できない方のための猶予制度について』





経営者のための災害対応チェックリスト


平時の備え

✓    事業所の耐震化、オフィス家具・機器の転倒防止対策を実施しているか

✓    水・食料等の備蓄、避難経路の確認、安否確認手段を整備しているか

✓    BCP(事業継続計画)を策定し、定期的に見直しているか

✓    災害時の休業判断基準・出社基準を就業規則やマニュアルに定めているか

✓    従業員への防災教育・訓練を実施しているか



災害発生時の労務対応

✓    休業手当の要否を「不可抗力の2条件」で判断できるか

✓    従業員から非常時払いの請求があった場合の対応フローを理解しているか

✓    36協定の上限を超える場合の労基署への許可申請・事後届出の手順を把握しているか

✓    災害時のケガについて、労災認定の考え方を理解しているか

✓    保険料の納付が困難な場合の猶予制度を把握しているか




まとめ


自然災害はいつ発生するか予測できません。災害時の労務対応をその場の判断に頼ると、対応のばらつきや意思決定の遅れが生じ、従業員の安全と信頼を損なうリスクがあります。

休業手当の「不可抗力」の判断、非常時払いへの対応、時間外労働の特例、労災認定──いずれも平時にルールを整理し、就業規則やマニュアルに落とし込んでおくことが最善の備えです。

災害時の労務対応は、被害状況や就業規則の内容によって判断が異なります。自社のルール整備に不安がある場合は、社会保険労務士や所轄労働基準監督署へご相談ください。





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