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【2026年版・義務化対応】職場の熱中症対策、義務化にどこまで対応できていますか?

  • 大澤労務管理事務所
  • 5月29日
  • 読了時間: 8分
【2026年版熱中症対策ガイド】。女性がヘルメット装着、背景は青空。暑熱順化と義務化対応のポイント解説。テキスト強調。

暑熱順化の進め方・WBGT着衣補正・義務化チェックポイントまで徹底解説

【従業員向け説明資料ダウンロード付き】


5月・6月は熱中症の「隠れたピーク」です。

2025年6月の改正労働安全衛生規則により、WBGT28℃以上等の環境下での熱中症対策が企業の法的義務となりました。義務化から約1年が経過した今、対策の実効性が問われるフェーズに入っています。

特に身体が暑さに慣れていない5月・6月は、WBGT値が比較的低い段階でも重症化するリスクがあり、「暑熱順化」への早期の取り組みが不可欠です。

本記事では、熱中症の基礎知識、暑熱順化の具体的な進め方、義務化対応のチェックポイント、WBGT着衣補正の実務まで体系的に解説します。



この記事でわかること


●    熱中症の重症度分類(2026年3月改訂・Ⅰ〜Ⅳ度)

●    5月・6月に熱中症リスクが高い理由

●    暑熱順化の進め方(期間・対象者・喪失リスク・トレーニング)

●    義務化で求められる2つの措置(報告体制・手順の作成)

●    WBGT値の把握と着衣補正の実務

●    現場での具体的予防アクション

●    経営者のための義務化対応チェックリスト



1. 熱中症の基礎知識


【熱中症とは】

高温多湿な環境下で発汗による体温調節がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。めまい、吐き気、意識障害などが主な症状で、屋内・屋外を問わず発症します。



【重症度分類(2026年3月改訂)】

2026年3月に厚生労働省が公表した「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」では、日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024に基づき、重症度がⅠ〜Ⅳ度の4段階に見直されました。

重症度

主な症状

対応

Ⅰ度

めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん、大量の発汗

現場での応急処置(涼しい場所で休息、水分・塩分補給)

Ⅱ度

頭痛、吐き気、倦怠感、集中力の低下

医療機関への搬送が必要

Ⅲ度

意識障害、けいれん、高体温

入院が必要

Ⅳ度(新設)

深部体温40℃超、多臓器障害

集中治療が必要


Ⅰ度は現場での適切な対応があれば改善が見込めますが、症状が改善しない場合やⅡ度以上の症状がみられる場合は、直ちに医療機関への搬送が必要です。




【5月・6月にリスクが高い理由】

熱中症による労働災害は5月下旬から6月にかけても急増します。この時期は身体が暑さに慣れていない(暑熱順化していない)ため、急な気温上昇に体温調節機能が対応できず、WBGT値が比較的低い段階でも重症化するリスクがあります。




2. 対策の鍵──「暑熱順化」の具体的な進め方


【暑熱順化とは】

身体が暑さに慣れることを「暑熱順化」といいます。順化した身体は発汗機能が向上し、体温の上昇を抑えやすくなります。熱中症予防において最も効果的な手法の一つです。



【順化期間と対象者】

項目

内容

順化期間の目安

7日以上(可能であれば2週間程度)かけて段階的に行う

順化が不十分と想定される対象者

入社直後の従業員、新たに暑熱環境下に配置された従業員、長期休暇明けの従業員、基礎疾患のある従業員


特に入社直後の従業員には、すでに順化している他の従業員と同じ作業負荷をかけず、段階的なプログラムを組むことが重要です。



【暑熱順化の喪失リスク】

【順化は失われる】

順化した身体であっても、暑熱環境下での作業が中断すると4日後には顕著な喪失が始まり、3〜4週間で完全に失われます。連休明けの初日などは、ベテラン作業員であっても「非順化者」として扱い、休憩時間を通常より長く設定するなどの配慮が必要です。



【日常生活でできる順化トレーニング】

方法

具体的な内容

頻度の目安

入浴

湯船に浸かり、汗をかく習慣をつける

毎日

ウォーキング

やや早歩きで30分程度。汗ばむペースで

週3〜5回

軽い運動

ジョギング、サイクリング、ストレッチ等

週3〜5回

こまめな水分補給

運動前後だけでなく日常的に水分を摂取する

常時


数日から2週間程度で効果が定着するとされています。9月頃まで暑さが続くため、従業員への声掛けを継続しましょう。





3. 熱中症対策の義務化──企業に求められる2つの措置


2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、以下の作業に対して2つの措置が義務付けられています。

対象作業:

WBGT 28℃以上または気温31℃以上の場所で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業



【措置① 報告体制の整備】

チェック項目

確認内容

管理者の選任

熱中症対策に関する管理者を選任したか

定期巡視

作業場所の定期巡視を実施する体制があるか

報告ルート

作業者から管理者への報告ルートが明確か

緊急連絡先

緊急時の連絡先(救急・産業医等)を周知しているか

事前周知

報告体制を作業開始前に対象者へ周知したか



【措置② 手順の作成】

チェック項目

確認内容

WBGT値の把握方法

WBGT指数計の準備・点検方法を定めているか

作業管理の手順

WBGT値に応じた作業中止・休憩等の判断基準を定めているか

応急処置の手順

Ⅰ度〜Ⅳ度の症状別の応急処置手順を定めているか

搬送の手順

医療機関への搬送判断基準と搬送方法を定めているか

教育・訓練

作業関係者に対する熱中症教育を実施しているか

周知

手順を作業開始前に関係者に周知したか


【義務違反は罰則の対象】

義務付けられた措置を講じない場合、罰則の対象となる可能性があります。報告体制の整備と手順の作成は、熱中症リスクのある作業を開始する前までに完了させ、事前に対象者へ周知を徹底してください。




4. WBGTの把握と着衣補正──実務のポイント


【WBGT値の把握】

WBGT値(暑さ指数)は、気温・湿度・輻射熱を総合的に評価する指標です。日本産業規格(JIS Z 8504またはJIS B 7922)に適合したWBGT指数計を使用し、実測値を把握します。



【着衣補正が必須】

実測したWBGT値に、着用している衣服に応じた「着衣補正値」を加算して評価することがガイドラインに明記されています。

衣服の種類

着衣補正値(℃-WBGT)

作業服(長袖・長ズボン)

+0

布製つなぎ服

+0

単層の不透湿性つなぎ服(フードなし)

+10

単層の不透湿性つなぎ服(フードあり)

+11

二層の不透湿性つなぎ服

+13


計算例:フードなしの単層不透湿性つなぎ服を着用し、現場の実測WBGT値が20℃の場合 → 評価値は20+10=30℃となり、基準値(28℃)を超える可能性があります。「実測値は低いから大丈夫」は通用しません。





5. 現場での具体的予防アクション


分類

具体的な対策

作業環境の管理

遮光ネット・送風機・スポットクーラーの設置、休憩場所の確保(冷房・日陰)

作業管理

高温時間帯の作業回避、作業と休憩の交互実施、作業強度に応じた休憩頻度の設定

水分・塩分補給

身近な場所への飲料水の常備、15〜20分ごとの補給を推奨、塩分タブレット等の配置

体調管理

作業前の健康状態チェック、爪押しセルフチェック、尿の色によるセルフチェック

服装

通気性の良い作業服の選定、クールベスト・冷却タオル等の活用

教育・訓練

重症度分類と応急処置の教育、ヒヤリハット事例の共有





経営者のための義務化対応チェックリスト


✓    自社に「熱中症を生ずるおそれのある作業」(WBGT28℃以上等)があるか把握しているか

✓    熱中症対策の管理者を選任しているか

✓    報告体制(作業者→管理者→緊急連絡先)を整備し、対象者に周知しているか

✓    作業中止・休憩等の判断基準を含む手順を作成し、関係者に周知しているか

✓    WBGT指数計を準備し、点検方法を定めているか

✓    着衣補正値を加算した評価値でリスク判定を行っているか

✓    暑熱順化の期間(7日〜2週間)を確保し、入社直後の従業員に段階的なプログラムを組んでいるか

✓    連休明けの従業員を「非順化者」として扱い、配慮しているか

✓    水分・塩分補給の体制(飲料水の常備、補給の声掛け)を整えているか

✓    重症度分類(Ⅰ〜Ⅳ度)と応急処置手順を全作業者に教育しているか

✓    ヒヤリハット事例を記録・共有し、次年度の対策に反映しているか




まとめ


職場の熱中症対策は、2025年6月の義務化により「企業の努力」から「法的義務」へとステージが変わりました。義務化から約1年が経過した今、対策の実効性が問われるフェーズに入っています。

特に5月・6月は、身体が暑さに慣れていないために重症化リスクが高い時期です。暑熱順化への早期の取り組みと、報告体制・手順の事前整備を徹底しましょう。WBGT値の着衣補正という実務上の重要ポイントも忘れずに確認してください。

記事末尾の従業員向け説明資料もあわせてご活用ください。






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