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【法改正対応】教育訓練休暇給付金とは? 企業が整備すべき休暇制度と申請の流れ

  • 大澤労務管理事務所
  • 6月17日
  • 読了時間: 8分
女性会社員がノートに書きながら学ぶ企業向け告知バナー。教育訓練休暇給付金ガイド、2025年10月新設、中小企業の人材育成支援の文字。

教育訓練給付金との違い・支給要件・給付日数・就業規則の規定方法まで解説


「学びたいが時間がない」──その課題を解決する新制度が始まりました。

2025年10月に創設された「教育訓練休暇給付金」は、従業員が離職せずに教育訓練に専念するための連続30日以上の休暇を取得した場合に、休暇期間中の生活費を一部保障する制度です。

従来の「教育訓練給付金」が受講費用を支援するのに対し、新制度は「時間と生活費」を支援する点が大きな違いです。両方を併用することで、従業員の学び直しを費用・時間の両面から支援できます。

本記事では、制度の概要、支給要件、企業が事前に整備すべき就業規則のポイント、申請手続きの流れまでを体系的に解説します。



この記事でわかること


●    教育訓練休暇給付金の仕組みと教育訓練給付金との違い

●    支給対象者の要件(被保険者期間・加入期間)

●    給付日数・給付日額の計算方法

●    対象となる休暇の3要件

●    就業規則への規定方法と事前準備の手順

●    申請手続きの全体フロー

●    従業員に説明すべき注意点(失業手当等への影響)





1. 教育訓練休暇給付金とは──教育訓練給付金との違い


まず、名称が似ている2つの制度の違いを整理します。

項目

教育訓練給付金(既存)

教育訓練休暇給付金(新設)

支援の対象

受講費用

休暇期間中の生活費

何を支給するか

受講料の一部を本人に給付

休暇中の賃金の一部を本人に給付

休暇の要件

なし(働きながら受講可能)

連続30日以上の無給休暇

企業の事前準備

不要(従業員が個人で申請)

就業規則に休暇制度の規定が必要

併用

両方の要件を満たせば併用可能


▶経営者の視点

教育訓練給付金は従業員が個人で申請するため企業の関与は不要でしたが、教育訓練休暇給付金は企業側の制度整備(就業規則への規定)が前提条件です。つまり、企業が動かなければ従業員はこの制度を使えません。




2. 支給対象者の要件


以下の2つの要件をいずれも満たす雇用保険の一般被保険者が対象です。

要件

内容

補足

① 被保険者期間

休暇開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または80時間以上)の月が12か月以上あること

疾病・負傷等で30日以上賃金を受けられなかった場合、最長2年間を加算可(合計4年間で判定)

② 雇用保険の加入期間

休暇開始日の前日時点で、雇用保険に加入していた期間が5年以上あること

途中で離職していても、離職期間が1年以内なら前後の期間を通算可能


【除外される期間に注意】

過去に失業手当の受給資格決定を受けた場合、その離職日以前の被保険者期間は除かれます。また、過去に教育訓練休暇給付金を受給した場合、その受給資格の要件となった被保険者期間も除かれます。




3. 受給期間・給付日数・給付日額


項目

内容

受給期間

休暇開始日から1年間(1年を超える休暇でも、1年を超えて給付は受けられない)

給付日額の

算定方法

休暇開始前6か月の賃金日額(6か月の賃金総額÷180)に基づき算定(失業手当と同じ方式)

支給額

給付日額 × 休暇日数



■雇用保険加入期間に応じた給付日数

雇用保険の加入期間

給付日数

5年以上10年未満

90日

10年以上20年未満

120日

20年以上

150日



▶試算ツール

厚生労働省が「教育訓練休暇給付金シミュレーター」(Excel)を公開しています。年齢と額面月収を入力するだけで支給額を試算できます。従業員への説明にも活用できます。




4. 対象となる休暇の3要件


従業員が給付金を受給するには、企業が以下の3要件をすべて満たす休暇制度を導入している必要があります。

要件

内容

注意点

① 就業規則等に規定

就業規則または労働協約に定められた休暇であること

休暇の名称は「教育訓練休暇」に限られない

② 連続30日以上の無給休暇

従業員の自発的な希望により企業が承認した休暇であること

企業からの業務命令による休暇は対象外

③ 対象の教育訓練

大学・大学院・専修学校等の教育訓練、教育訓練給付金の指定講座を持つ法人の教育訓練、その他職業に関する教育訓練

語学留学、海外大学院での修士号取得なども対象


【解雇・雇止め予定者は対象外】

解雇や雇止めを予定している従業員に教育訓練休暇を取得させることはできません。虚偽の届出は罰則の対象です。また、教育訓練休暇を取得した従業員を解雇・雇止めにすると、一定期間、雇用関係助成金が受給できなくなる場合があります。




5. 企業の事前準備──就業規則の整備と手順


■就業規則への規定が前提条件

教育訓練休暇給付金を活用するには、就業規則に教育訓練休暇制度が規定されていることが前提です。制度がない場合は新設、要件を満たしていない場合は見直しが必要です。


▶規定例

厚生労働省のパンフレットに就業規則の規定例が掲載されています。



■実施の手順──順番が重要

以下の順番を守らないと、給付金の支給対象になりません。

順番

手続き

注意点

(1)

就業規則を改定し、従業員に周知+労基署へ届出

10人未満の事業場は、適切な手続きで定められ周知されていることの証明が必要

(2)

就業規則の施行日(または改定日)

(1)よりも後の日付であること

(3)

教育訓練休暇の開始日

(2)よりも後の日付であること


▶事前相談の推奨

就業規則に定めた教育訓練休暇が給付金の支給対象となる内容かどうか、事前にハローワークに相談できます。休暇が開始される前までに相談しておくと安心です。




6. 申請手続きの全体フロー


ステップ

誰が

内容

① 休暇制度の整備

企業

就業規則の改定・届出・周知

② 休暇取得の申請

従業員→企業

従業員が教育訓練休暇の取得を希望し、企業が承認

③ 届出書類の提出

企業→ハローワーク

「教育訓練休暇届出書」等を事業所管轄のハローワークへ提出

④ 受給資格の確認

従業員→ハローワーク

「教育訓練休暇給付金受給資格確認票」等を住所地管轄のハローワークへ提出

⑤ 休暇の開始

従業員

教育訓練に専念

⑥ 認定申告

従業員→ハローワーク

休暇開始日から30日経過ごとに「認定申告書」を住所地管轄のハローワークへ提出

⑦ 給付金の支給

ハローワーク→従業員

認定申告に基づき給付金が支給される


▶提出先の違いに注意

企業が提出する書類(③)は事業所所在地のハローワーク、従業員が提出する書類(④⑥)は従業員の住所地のハローワークと、提出先が異なる場合があります。




7. 従業員に説明すべき注意点


教育訓練休暇給付金の利用は、他の雇用保険給付にも影響があります。従業員が十分に理解したうえで受給を検討できるよう、以下の点を事前に説明しておきましょう。

影響を受ける給付

影響の内容

失業手当(基本手当)

教育訓練休暇給付金を受給すると、被保険者期間がリセットされるため、退職後の失業手当の受給に影響が出る場合がある

教育訓練給付金

併用は可能だが、それぞれの支給要件を満たしている必要がある

高年齢雇用継続給付

教育訓練休暇期間中は支給されない


特に失業手当への影響は重要です。教育訓練休暇給付金を受給した後に退職した場合、被保険者期間の計算がリセットされるため、失業手当を受給できない、または給付日数が減少する可能性があります。この点は必ず従業員に説明してください。


従業員のスキルアップ支援と人材定着を組み合わせた経営戦略については「人手不足でも人が辞めない中小企業は何をしているのか?」もあわせてご覧ください。

人材育成に活用できる助成金の最新情報は「【2026年度】押さえるべき助成金の改正ポイント4選」で解説しています。人材開発支援助成金の設備投資加算など、教育訓練休暇給付金と組み合わせて活用できる制度もあります。




経営者のための制度導入チェックリスト


✓    就業規則に教育訓練休暇制度を規定しているか(または新設・見直しが必要か)

✓    休暇制度が3要件(就業規則に規定・連続30日以上の無給・対象の教育訓練)を満たしているか

✓    就業規則の改定→施行→休暇開始の順番を守れるスケジュールになっているか

✓    就業規則の変更後、従業員代表の意見聴取と労基署への届出を行ったか

✓    教育訓練休暇制度の内容と教育訓練休暇給付金の概要を全従業員に周知したか

✓    従業員に失業手当等への影響を説明したか

✓    ハローワークへの事前相談を検討したか

✓    教育訓練給付金との併用が可能か確認したか




まとめ


教育訓練休暇給付金は、従業員の「学びたいが時間がない」という課題を解決し、離職せずにスキルアップを可能にする新しい制度です。教育訓練給付金(費用支援)と併用すれば、「時間+費用」の両面から学び直しを支援する体制を整えることができます。

企業にとっては、従業員のスキルアップによる生産性向上と、「学べる環境がある」ことによる人材定着の効果が期待できます。特にDX化や事業転換を進める企業にとって、活用の余地は大きい制度です。

ただし、就業規則への規定が前提条件であり、手順の順番を間違えると給付金の対象外となります。制度導入を検討する場合は、早めに専門家へご相談ください。




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