【2026年度】押さえるべき助成金の改正ポイント4選
- 大澤労務管理事務所
- 6月5日
- 読了時間: 8分

キリアアップ・リスキリング・働き方改革・両立支援
主な変更点を一覧で整理
2026年度、主要な助成金に改正が入っています。
助成金は「制度を導入するだけ」で受給できる時代から、「情報の外部公表」「訓練と設備投資の連動」「制度の利用実績」など実効性を伴う取り組みが求められる方向へ変わっています。
本記事では、2026年4月に改正された4つの助成金について、改正前後の比較と実務上の注意点を整理します。
この記事でわかること ● キャリアアップ助成金──情報公表加算の新設(20万円) ● 人材開発支援助成金──設備投資加算の新設・対象訓練の拡充 ● 働き方改革推進支援助成金──賃金引上げ加算の拡充・割増賃金率引上げ加算の新設 ● 両立支援等助成金──利用実績要件の追加・障害児等支援加算の新設 ● 4つの助成金の改正ポイント比較一覧 |
1. 2026年度 助成金改正ポイント比較一覧
まず4つの助成金の改正点を一覧で把握しましょう。
助成金 | 改正のキーワード | 対象企業 |
キャリアアップ助成金 (正社員化コース) | 情報公表加算の新設(20万円/回) | 全企業 |
人材開発支援助成金 (事業展開等リスキリング支援コース) | 設備投資加算の新設(費用の50%)+対象訓練の拡充 | 中小企業のみ(設備投資加算) |
働き方改革推進支援助成金 (労働時間短縮・年休促進支援コース) | 賃金引上げ加算の拡充(10人未満は2.5倍)+割増賃金率加算の新設 | 中小企業のみ |
両立支援等助成金 (柔軟な働き方選択制度等支援コース) | 利用実績要件の追加+障害児等支援加算の新設(20万円) | 中小企業のみ |
2. キャリアアップ助成金(正社員化コース)
【制度の概要】
有期雇用・無期雇用の非正規従業員を正社員に転換した場合に支給される助成金です。
項目 | 内容 |
対象 | 有期契約労働者等を正社員に転換(派遣労働者の直接雇用を含む) |
支給額(中小企業) | 有期→正規:80万円(2期分)/ 無期→正規:40万円(2期分) |
支給額(大企業) | 有期→正規:60万円(2期分)/ 無期→正規:30万円(2期分) |
【改正ポイント:情報公表加算の新設】
非正規従業員の処遇改善にかかる情報を企業が自ら公表した場合に、加算が受けられるようになりました。
項目 | 内容 |
加算額 | 1事業所あたり1回のみ 20万円(大企業15万円) |
対象 | 2026年4月8日以降に正社員へ転換等した従業員にかかる申請 |
公表する情報 | 正社員転換制度の内容、正社員転換の実績、有期契約労働者等の研修制度の内容 |
公表方法 | 自社サイト または 厚生労働省「しょくばらぼ」 |
▶経営者の視点
「しょくばらぼ」への情報掲載は、助成金の加算だけでなく採用ブランディングにも活用できます。正
社員転換制度の実績を外部に示すことで、求職者へのアピールにもつながります。
3. 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
【制度の概要】
新規事業への展開、DX化、グリーン・カーボンニュートラル化に対応した従業員の訓練を行う企業に対して、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
項目 | 中小企業 | 大企業 |
経費助成率 | 75% | 60% |
賃金助成(1人1時間あたり) | 960円 | 480円 |
1事業所あたり年間上限額 | 1億円 | 1億円 |
【改正①:設備投資加算の新設(中小企業のみ)】
訓練修了後、その事業展開に必要な機器・設備を導入し、一定の賃金引上げを行った場合に、設備導入費用の50%が助成される新しい加算措置です。
項目 | 内容 |
対象 | 2026年4月8日以降に提出された職業訓練実施計画届に基づく訓練 |
助成率 | 設備導入費用の50% |
上限額 | 1事業所あたり1,000万円 |
主な要件 | 事業展開に係る計画の策定、賃金3%以上の引上げ、訓練修了後の設備導入、設備導入後6か月間の生産性要件 |
【申請時期が通常分と異なる】 設備投資加算の申請は、通常分(経費助成・賃金助成)の支給決定後に行います。通常分とは別のタイミングでの申請となるため、スケジュール管理に注意してください。 |
【改正②:対象訓練の拡充】
2026年3月2日より、「従業員が今後従事することが予定される職務に関連する知識・技能を習得させるための訓練」も対象に追加されました。これにより、事業展開の準備段階での人材育成にも活用しやすくなっています。
なお、人材育成と定着を組み合わせた経営戦略については「人手不足でも人が辞めない中小企業は何をしているのか?」でも解説しています。
4. 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
【制度の概要(中小企業のみ)】
時間外労働・休日労働の削減や年次有給休暇の取得促進など、働きやすい職場環境の整備に取り組む企業を支援する制度です。
項目 | 内容 |
申請受付期間 | 2026年4月13日〜11月30日(予算額に達し次第終了の場合あり) |
支給額 | 取り組みに要した費用の3/4(上限額は成果目標により異なる) |
成果目標(例) | 36協定の時間外・休日労働時間の縮減、年次有給休暇の計画的付与制度の導入、時間単位年休の導入 等 |
【改正①:賃金引上げ加算の拡充 】
賃金引上げによる加算が、小規模な企業をより手厚く支援する内容に変更されました。
企業規模 | 賃金引上げ5%以上 または 7%以上の場合の上限額 |
従業員10人未満 | 上限額の2.5倍(新設・拡充) |
従業員10人以上30人以下 | 上限額の2倍(従来どおり) |
従業員31人以上 | 上限額の1倍(加算なし) |
【改正②:割増賃金率引上げ加算の新設】
割増賃金率を一定以上に引き上げた場合の加算措置が新設されました。月60時間超の時間外労働の割増率(法定50%以上)に加え、月60時間以下の引上げも対象となります。
長時間労働の是正や有給休暇の取得促進に取り組む背景については「過労死を防ぐために企業が取り組むべき6つの対策」もあわせてご覧ください。
5. 両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)
【制度の概要(中小企業のみ)】
育児と仕事の両立支援のため、柔軟な働き方に関する制度を導入し、従業員が制度を利用した場合に助成する制度です。2つの種類があります。
種類 | 内容 | 支給額 |
柔軟な働き方選択制度 | 2025年10月義務化の「柔軟な働き方の措置」(5つから2つ以上選択)を導入し、従業員が利用した場合 | 制度2つ導入:20万円 3つ以上導入:25万円 |
子の看護等休暇有給化支援 | 子の看護等休暇を有給化する制度を導入し、従業員が利用した場合 | 28.5万円 |
【改正①:子の看護等休暇有給化の要件追加】
これまでは制度の有給化だけが要件でしたが、今回の改正で対象従業員が制度を10時間以上利用することなども支給要件に追加されました。「制度を作っただけ」ではなく、実際に使われることが求められるようになっています。
【改正②:障害児等要配慮支援加算の新設】
項目 | 内容 |
加算額 | 1事業主あたり1回のみ 20万円 |
要件 | 障害児等を養育する従業員に対して、制度の利用期間を子が18歳になる年度末まで引き上げた場合 |
対象(柔軟な働き方選択制度) | 2026年4月8日以降に従業員が制度を利用開始した実績が必要 |
対象(子の看護等休暇有給化) | 2026年4月8日以降に新たに規定した制度が対象 |
2025年10月に義務化された「柔軟な働き方の措置」の5つの選択肢と個別周知・意向確認の実務については「育児と仕事の両立支援、企業にはどんな制度が必要?」で詳しく解説しています。
経営者のための助成金活用チェックリスト
✓ キャリアアップ助成金:非正規従業員の正社員転換を計画しているか
→ 情報公表加算(20万円)の活用を検討
✓ 人材開発支援助成金:新規事業・DX化に伴う従業員教育を計画しているか
→ 設備投資加算(費用の50%)の活用を検討
✓ 働き方改革推進支援助成金:労働時間短縮・年休取得促進に取り組んでいるか
→ 申請期限2026年11月30日(予算終了次第締切)
✓ 両立支援等助成金:育児と仕事の両立支援制度を導入しているか
→ 利用実績が要件に追加された点に注意
✓ 助成金の計画届・就業規則の整備は事前に完了しているか(申請後では間に合わない場合がある)
✓ 改正前・改正後のどちらの支給要件が適用されるか確認したか
【助成金は「後から申請」ではもらえない】 多くの助成金は、取り組みを始める前に計画届の提出や就業規則の整備が必要です。「取り組みが終わってから申請しよう」では要件を満たせない場合があります。助成金の活用を検討する場合は、取り組みを始める前の段階で社会保険労務士に相談することをおすすめします。 |
まとめ
2026年度の助成金改正は、「情報公表」「設備投資との連動」「制度の利用実績」など、実効性を重視する方向に進んでいます。単に制度を導入するだけでなく、従業員が実際に制度を活用し、その結果を外部に示すことが求められるようになりました。
特に中小企業にとっては、人材開発支援助成金の設備投資加算(費用の50%、上限1,000万円)や、働き方改革推進支援助成金の賃金引上げ加算(10人未満は2.5倍)など、手厚い支援が用意されています。
助成金は要件が細かく、申請のタイミングを誤ると受給できなくなるため、取り組みを検討する段階で早めに専門家へご相談ください。
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