【基礎知識】採用コンプライアンス|採用活動で年齢制限は許されるのか?例外も紹介。
- 大澤労務管理事務所
- 3月31日
- 読了時間: 6分
更新日:5月12日

経営者が知っておくべき法的ルールと6つの例外
「年齢不問と書いておけば問題ない」──そう考えていませんか?
募集・採用における年齢制限は、労働施策総合推進法により原則禁止されています。しかし、単に求人票の記載を変えるだけでは不十分です。選考過程での年齢を理由とした不採用や、応募者の年齢による雇用条件の変更も法令違反となります。
一方で、法令は6つの例外事由を定めており、これらを正しく理解し活用することは、適法な人材戦略を構築するうえで不可欠です。
本記事では、年齢制限禁止の原則と例外を体系的に整理し、経営判断に必要な知識をお伝えします。
1. なぜ年齢制限は禁止されているのか
少子高齢化が加速する日本では、年齢に関係なく能力を発揮できる労働環境の整備が、経済の持続的成長に不可欠とされています。この背景から、労働施策総合推進法は、企業が従業員を募集・採用する際に年齢制限を設けることを原則として禁止しています。
年齢によらず、個人の能力や適性を基準に採用を行うことで、より均等な就労機会を提供し、企業としても多様な人材を確保できるというのが法の趣旨です。
2. 年齢制限禁止ルールの適用範囲
年齢制限の禁止は、自社サイト、民間の職業紹介事業者、求人広告、ハローワークなど、すべての募集媒体に適用されます。また、正社員だけでなく、パート・アルバイト、派遣など雇用形態を問わず対象となります。
▶求人票の記載だけでは不十分
「年齢不問」と記載しているだけでは法令遵守にはなりません。
具体的に以下のような対応も禁止されています。
選考過程において年齢を理由に応募を断る、または採否を決定する
応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変更する
▶経営者の視点からのポイント
採用方針が現場レベルで正しく運用されているかを確認することが重要です。求人票に「年齢不問」と書いていても、実際の書類選考や面接で年齢が判断基準となっていれば、法令違反のリスクがあります。
3. 年齢制限が認められる6つの例外事由
原則禁止の一方で、以下の6つの要件を満たす場合は、年齢制限を設けることが法令上認められています。自社の採用ニーズに該当するものがないか、確認してみてください。
【理由の明示義務について】 年齢制限の上限を65歳未満とする場合は、高年齢者雇用安定法により、求職者に対して年齢制限の理由を書面または電子媒体で明示する義務があります。65歳以上の制限を設ける場合は明示義務はありませんが、法令違反でないことを明確にするために、制限理由を明示することが望ましいとされています。
①定年年齢を上限とした無期雇用契約での募集・採用
定年年齢を上限に募集・採用する場合、「定年の定めがあること」かつ「期間の定めのない労働契約であること」の2つの要件を満たす必要があります。有期雇用契約の募集で年齢制限を行った場合は法令違反となるため、注意が必要です。
②. 法令により年齢制限が設けられている業務
危険物や重量物を取り扱う業務、警備業など、法令上18歳未満の就労が制限されている業務については、募集・採用時に年齢制限を設けることが認められています。
③. 長期キャリア形成を目的とした若年者の無期雇用採用
長期雇用を前提とした人材育成を目的に、若年者等を期間の定めのない労働契約で採用する場合に認められる例外です。厚生労働省によると「若年者等」は基本的に35歳未満が想定されていますが、必ずしもこの年齢に限定されるものではありません。ただし、定年を設けている企業では、上限年齢と定年の間が極端に短くなる設定は認められず、おおむね45歳未満が目安とされています。
▶この例外を適用するための要件
✓ 職業経験を不問とすること(職務経験を要する資格の保有を求めることも不可)
✓ 新卒者以外も対象とする場合、新卒者と同等の育成体制(訓練・配置・処遇)を準備していること
④. 技能・ノウハウ継承のための特定年齢層の無期雇用採用
特定の専門職種において、従業員が相当程度少ない年齢層(30〜49歳の範囲で5〜10歳幅で区切り、上下の年齢層と比較して1/2以下)を対象に、期間の定めのない労働契約で採用する場合に認められます。
▶対象となる「特定の職種」の例
電気通信技術者、水産技術者、ホームヘルパーなど、専門的な技能の継承が求められる職種が該当します。具体的な職種名は厚生労働省の「職業分類」を参照してください。
⑤. 芸術・芸能分野における表現の真実性の要請
作品の表現上、年齢によるリアリティが重要となるモデルや役者については、特定の年齢層に限定した募集・採用が認められています。
⑥. 60歳以上の高年齢者または雇用促進施策対象者の限定採用
60歳以上に限定した募集・採用や、国が実施する雇用促進施策を活用するために対象年齢層に限定して採用する場合に認められます。
参考情報:例外①〜⑥の詳細な事例と解説は、厚生労働省の資料「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」で確認できます。
4. 経営者が今すぐ取り組むべき3つのアクション
年齢から想像される体力・能力のイメージで採用を行うと、優秀な人材を逃すリスクがあります。以下の3つのアクションで、適法かつ効果的な採用を実現しましょう。
アクション | 具体的な内容 |
求人内容の具体化 | 年齢ではなく、業務遂行に必要なスキル・経験・資格を明確に定義し、求人票に落とし込む |
選考プロセスの点検 | 書類選考・面接において、年齢が実質的な判断基準になっていないか、選考フローを見直す |
社内教育の実施 | 採用担当者に対して年齢制限禁止のルールと例外を周知し、コンプライアンス意識を高める |
求人内容を具体化することで、募集業務に対応できる人材を幅広く集めることが可能となり、年齢に関係なく適切な人材の確保につながります。
5. 法令違反のリスク
募集・採用における年齢制限禁止の原則や例外に反する対応を行った場合、
以下のリスクが想定されます。
行政による助言・指導・勧告の対象となる
求人票の記載修正にとどまらず、企業イメージの低下につながるおそれがある
採用活動全体への悪影響(応募者の減少、採用コストの増加など)
▶経営者として認識すべきこと
コンプライアンス違反は、人材確保の観点だけでなく、企業ブランドや株主・取引先からの信頼にも直結します。定期的な採用プロセスの見直しが不可欠です。
まとめ
年齢にとらわれず、業務に必要なスキル・経験・資格を基準として採用を行うことで、応募者数の増加と採用のミスマッチ防止が期待できます。6つの例外事由を正しく理解し、必要に応じて活用することで、法令を遵守しながら自社に最適な人材戦略を構築することが可能です。
人材確保と企業価値の向上を図るために、自社の採用活動が適正であるかを随時見直していきましょう。
採用・労務のご相談は大澤労務管理事務所へ |
「自社の求人票は法令に沿っているだろうか」 「例外事由を活用したいが要件を満たしているか確認したい」 そんなお悩みはありませんか? 大澤労務管理事務所は、埼玉県川越市を拠点に、中小企業の採用・労務管理を幅広くサポートする社会保険労務士事務所です。採用コンプライアンスの確認から、就業規則の整備、助成金の活用まで、経営者に寄り添った実務支援を行っています。 まずはお気軽にご相談ください。 |
参考リンク





コメント