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【基礎知識】社会保険の「同月得喪」と「同日得喪」とは? 違いと実務対応

  • 大澤労務管理事務所
  • 5月10日
  • 読了時間: 8分

更新日:5月11日

社会保険の「同月得喪」と「同日得喪」についての解説資料。雇用状況や保険料の解説、チェックリストが含まれている。

保険料の取扱い・還付の流れ・届出手続きまで、

具体例でわかりやすく解説


「同月得喪」と「同日得喪」名前は似ていますが、仕組みも対応もまったく異なります。

同月得喪は「同じ月に入社と退職が起きたケース」、同日得喪は「60歳以上の定年再雇用で社会保険料を即座に見直すための制度」です。

いずれも社会保険料の計算に直接影響し、処理を誤ると過徴収や還付漏れが発生するため、正確な理解が求められます。

本記事では、2つの「得喪」の違い、保険料の取扱い、還付の流れ、届出手続きまでを具体例つきで解説します。



この記事でわかること


●    同月得喪と同日得喪の違い(一覧比較)

●    同月得喪が発生する条件と具体例

●    同月得喪の社会保険料──健康保険料と厚生年金保険料の取扱いの違い

●    厚生年金保険料の還付の流れと実務上の注意点

●    同日得喪の仕組み・メリット・注意点

●    同日得喪の届出手続きと必要書類



1. 同月得喪と同日得喪の違い──早わかり比較


まず、2つの「得喪」の違いを整理します。

項目

同月得喪

同日得喪

意味

同じ月に資格取得と資格喪失が発生

同じ日に資格喪失と資格取得が発生

典型的なケース

入社後すぐに退職(月途中の入退社)

60歳以上の定年退職→同日に同じ企業で再雇用

目的

(意図して行うものではなく、結果として発生)

再雇用後の給与に応じた社会保険料を即座に適用する

義務/任意

結果として発生

任意(手続きするかは企業・本人の判断)

社会保険料への影響

1か月分の保険料が発生(厚生年金は還付の可能性あり)

再雇用月から新しい標準報酬月額で保険料を計算

届出

通常の取得届・喪失届

喪失届と取得届を同時に届出




2. 同月得喪──同じ月に入社と退職が起きたとき


【同月得喪とは】

同じ月に社会保険の被保険者資格の取得と喪失が行われることを「同月得喪」といいます。入社したばかりの従業員がすぐに退職するケースなどで発生します。


【同月得喪になるケース・ならないケース】

ケース

入社日

退職日

資格喪失日

同月得喪?

月途中の入退社

4月1日

4月15日

4月16日

なる(同月に取得・喪失)

月末退職

4月1日

4月30日

5月1日

ならない(喪失日が翌月)


▶重要ポイント

社会保険の「資格喪失日」は退職日の翌日です。月末退職の場合、喪失日は翌月1日となるため、同月得喪にはなりません。




3. 同月得喪の社会保険料──健保と厚年で取扱いが異なる


【原則の確認:社会保険料の基本ルール】

社会保険料は1か月単位で発生し、日割計算はできません。

●    月途中で資格取得した場合 → 取得月の1か月分を控除

●    月途中で資格喪失した場合 → 喪失月の前月分まで控除

●    月末退職の場合 → 退職月の分も控除(喪失日が翌月のため)


【同月得喪の場合の特別ルール】

同月得喪の場合、月途中の喪失であっても1か月分の社会保険料が発生します。ただし、健康保険料と厚生年金保険料で取扱いが異なる点が最大の注意点です。

保険料の種類

同月得喪の取扱い

還付

厚生年金保険料

1か月分を控除・納付

還付あり

(同月中に他の年金制度に加入した場合)

健康保険料

1か月分を控除・納付

還付なし

(同月中に他の健康保険に加入しても還付されない)


【健康保険料は二重負担になる】

資格喪失した人が同じ月に別の健康保険(他社の社保・国保等)に加入した場合、同月得喪にかかる健康保険料と新たな加入先での健康保険料が二重に発生します。健康保険料は還付されないため、退職者の負担が増える点を認識しておきましょう。




4. 厚生年金保険料の還付──流れと実務上の選択肢


【還付が発生する条件】

同月得喪後、資格喪失した人が同じ月に以下のいずれかに該当した場合、同月得喪で納付した厚生年金保険料(企業負担分+被保険者負担分)が企業に還付されます。


●    他社への再就職等により、新たに厚生年金保険の資格を取得した場合

●    国民年金第1号被保険者または第3号被保険者の資格を取得した場合


【還付の流れ】

順序

内容

日本年金機構から企業宛に厚生年金保険料の還付に関する通知が届く

企業は還付方法を選択:「今後の保険料等と調整」または「還付請求による受取り」

企業負担分+被保険者負担分をあわせた厚生年金保険料が企業に還付される

企業は、還付された保険料のうち被保険者負担分を退職者に還付する

還付により源泉徴収票の差し替えが必要となる場合は、その対応も行う


【実務上の選択肢:あらかじめ控除しない方法】

厚生年金保険料の還付を見越して、同月得喪による厚生年金保険料をあらかじめ給与から控除しない運用を採る企業もあります。

この場合、企業が一旦被保険者負担分を立て替えて日本年金機構へ納付し、還付後に精算する形となります。退職者への還付手続きが不要になるメリットがありますが、還付までに一定期間を要するため、立替負担が発生する点に留意してください。




5. 同日得喪──60歳以上の定年再雇用で保険料を即時見直す制度


【同日得喪とは】

60歳以上の被保険者が退職後、1日も空けずに同じ企業で再雇用される場合に、社会保険の資格喪失届と取得届を同時に提出できる制度です。退職事由は定年に限らず、自己都合退職でも利用可能です。


【なぜ同日得喪が必要なのか】

定年再雇用では給与が下がることが少なくありません。通常、給与が変わっても随時改定や定時決定を待たなければ標準報酬月額は変更されず、高い保険料が続きます。同日得喪の手続きを行えば、再雇用月から新しい給与に応じた標準報酬月額が適用され、保険料負担を速やかに適正化できます。


【メリットと注意点】


内容

メリット

再雇用月から標準報酬月額が変更され、随時改定を待たずに社会保険料の負担を軽減できる。

注意点①

標準報酬月額が下がることにより、傷病手当金や将来の年金受給額も下がる可能性がある。

注意点②

資格確認書が交付されている場合は企業へ返却が必要。再雇用後も必要な場合は申出により新しい確認書が交付される。


▶重要

同日得喪の手続きは義務ではありません。メリットだけでなく注意点も被保険者本人に説明し、合意のうえで進めてください。また、契約期間途中の給与変更は同日得喪の対象にはなりません。あくまで「退職→再雇用」の場合に限られます。




6. 同日得喪の届出手続きと必要書類


項目

内容

届出様式

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 + 被保険者資格取得届(同時に届出)

届出先

事務センター または 管轄の年金事務所

届出方法

電子申請、郵送、窓口持参(窓口は年金事務所のみ)


【添付書類】

以下の書類がいずれも必要です。


●    退職日の確認ができる書類(就業規則、退職辞令の写しなど)

●    継続再雇用が確認できる書類(雇用契約書、労働条件通知書の写しなど)

●    資格確認書が交付されている場合は、資格確認書

※ 上記書類がない場合は「退職日と再雇用日が記載された事業主の証明書」で代替可能。役員が対象の場合は別途書類が必要です。

※ 被扶養者がいる場合、再雇用後も引き続き扶養するときは被扶養者異動届の届出も必要です。



【手続きの回数制限】

同日得喪の手続きに回数制限はありません。同日得喪の手続きを行った従業員について、再雇用後の契約期間が満了し、1日も空けずに給与を下げて契約更新した場合は、再び同日得喪の手続きを行うことができます。




実務対応チェックリスト


同月得喪が発生したとき

✓    健康保険料・厚生年金保険料ともに1か月分を給与から控除したか

✓    厚生年金保険料の還付の可能性を把握しているか(同月中に他の年金制度に加入した場合)

✓    還付が発生した場合、退職者への被保険者負担分の還付を行ったか

✓    還付に伴う源泉徴収票の差し替えが必要か確認したか


同日得喪を検討するとき

✓    対象者が60歳以上で、退職後1日も空けずに再雇用されるか確認したか

✓    メリット・注意点(傷病手当金・年金額への影響)を本人に説明したか

✓    資格喪失届と資格取得届を同時に作成したか

✓    添付書類(退職確認書類・再雇用確認書類・資格確認書)を準備したか

✓    被扶養者がいる場合、被扶養者異動届の届出も準備したか




まとめ


「同月得喪」と「同日得喪」は名前が似ているだけで、仕組み・発生するケース・保険料の取扱いがまったく異なります。

同月得喪では、健康保険料は還付されず二重負担となる一方、厚生年金保険料は条件を満たせば還付される点が最大の注意点です。同日得喪は、60歳以上の定年再雇用において保険料負担を速やかに適正化するための任意の制度で、メリット・デメリットを本人に説明したうえで活用を判断します。

いずれも社会保険料の計算に直接影響する実務です。対応に不安がある場合は、社会保険労務士など専門家への相談をおすすめします。




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