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【基礎知識】テレワーク導入の労務管理──労働時間・中抜け・労災まで企業が押さえるポイント

執筆者の写真: 大澤労務管理事務所
大澤労務管理事務所
9月10日
読了時間: 8分
テレワーク中の女性がノートPCとマグカップを前に座る広告。大見出しは「テレワーク導入の労務管理」、OSAWAロゴと相談ボタンがある。



労働時間の把握方法・休憩・中抜け時間・安全衛生・自宅での労災の考え方まで解説


「テレワーク中は労働時間が見えないから管理できない」

それでは法令違反のリスクがあります。


テレワークは、育児・介護・治療など、さまざまな事情を抱える従業員が仕事を継続するための有効な選択肢です。2025年施行の改正育児・介護休業法でも、テレワークを活用する措置が制度に組み込まれました。

一方で、テレワークを行う従業員にも労働基準法・労災保険法などの法令はすべて適用されます。「見えないから」と労働時間管理を曖昧にすると、未払い残業や長時間労働の温床になります。

本記事では、テレワーク導入時に企業が押さえるべき労働時間管理と労務管理のポイントを整理します。


この記事でわかること


●    テレワークの3形態と適している業務・業種

●    改正育児・介護休業法におけるテレワークの位置づけ

●    労働時間の把握方法(客観的記録/自己申告時の措置)

●    休憩・中抜け時間の取扱いと就業規則への定め方

●    事業場外みなし労働時間制が使える2つの条件

●    安全衛生・メンタルヘルス・作業環境の整備

●    自宅でのケガは労災になるのか






テレワークの基礎知識


■テレワークの3形態

形態

内容

在宅勤務

自宅で業務を行う。通勤負担がなく、育児・介護等との両立がしやすい

サテライトオフィス勤務

本来の勤務地以外のオフィスやコワーキングスペースなどで業務を行う

モバイル勤務

移動中の交通機関やカフェなど、場所を固定せずに業務を行う



■適している業務・業種


テレワークができる業務に決まりはありませんが、パソコン入力作業、資料作成、企画を思考する業務など、就業場所を選ばない業務が適しています。業種では、情報通信、不動産、金融・保険などで導入率が高くなっています。



■効果と課題


区分

内容

効果

通勤時間の削減、ワークライフバランスの実現、育児・介護・治療との両立、多様な人材の活躍、人材確保・定着

課題

労働時間の管理が難しい、長時間労働になりやすい、心身の変調に気づきにくい、コミュニケーションの減少




改正育児・介護休業法とテレワーク


2025年施行の改正育児・介護休業法は、育児期の「柔軟な働き方」を推進しており、テレワークの活用に関する措置が盛り込まれています。


措置

内容

義務/努力義務

3歳未満の子を養育する従業員へのテレワーク

テレワークを選択できる措置を講じる

努力義務(2025年4月〜)

柔軟な働き方の措置の選択肢

3歳〜小学校就学前の子を養育する従業員向けに講じる5つの措置のひとつとして「テレワーク(月10日以上利用可能)」を選択できる

5つから2つ以上の導入が義務(2025年10月〜)


▶留意点

改正対応としてテレワークを導入する場合、措置ごとにテレワークの要件(利用可能日数など)が定められている点に注意してください。

柔軟な働き方の措置の5つの選択肢と個別周知・意向確認の実務については「育児と仕事の両立支援、企業にはどんな制度が必要?」で詳しく解説しています。




労働時間管理

──テレワークでも労働基準法は全面適用


■労働時間の考え方


テレワークにおける労働時間の考え方は、通常勤務と同様です。労働時間とは「企業の指揮命令下に置かれている時間」であり、業務を行う時間だけではありません。労働時間に該当するかは、労働契約や就業規則の定めではなく、個々の具体的な状況によって判断されます。



■労働時間の把握方法


方法

内容・必要な措置

客観的な記録による把握(原則)

タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等を基礎として始業・終業時刻を確認する。テレワークでは、勤怠管理システムへの打刻やパソコンのログ記録の活用が考えられる

自己申告による把握

(やむを得ない場合)

適正な申告についての十分な説明、申告された時間と実態が合っているかの実態調査、適正な申告を阻害する措置(残業申請の上限設定等)を設けないこと、などの措置が必要


▶実務のコツ

自己申告制の場合、一日の終業時に始業・終業時刻をメール等で報告してもらうなど、簡便に把握する方法も認められています。




■休憩──一斉付与の例外


テレワークでも休憩の原則は通常勤務と同じです。休憩は一斉に与えることが原則ですが、テレワークでは難しい場合もあるため、「一斉休憩の適用除外に関する労使協定」を締結することで、一斉付与を適用除外にできます。



■中抜け時間──就業規則に定めておく


テレワークでは、育児や私用などによる「中抜け時間」が多くなることが想定されます。法令上、企業に中抜け時間の把握義務はありませんが、トラブル防止のため就業規則等で取扱いを定めておくことが大切です。


取扱いの例

内容

休憩時間として扱う

中抜け時間分、終業時刻を繰り下げる

時間単位の年次有給休暇として扱う

時間単位年休の制度がある場合

把握せず、始業・終業のみ管理する

中抜けを含めて労働時間として扱う運用



■事業場外みなし労働時間制が使える2つの条件


テレワークでは通常の労働時間制のほか、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制なども適用できます。事業場外みなし労働時間制を適用する場合は、以下の2条件をいずれも満たす必要があります。


条件

内容

①

情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

②

随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと


【割増賃金と長時間労働に注意】


テレワークでも、時間外労働・休日労働・深夜労働が発生した場合は割増賃金の支払いが必要です。また、テレワークは仕事とプライベートの区別が曖昧になり長時間労働になりやすいため、メール送付の抑制、システムへのアクセス制限、時間外労働の事前許可制などの対策が推奨されています。


長時間労働の是正を含む健康障害の防止対策については「過労死を防ぐために企業が取り組むべき6つの対策」もあわせてご覧ください。




導入時に押さえる労務管理の5ポイント


① 労働条件の明示──「就業場所」の記載


労働契約の締結時には「就業場所」の明示が義務付けられており、テレワークを行う従業員も同様です。雇用契約書には、自宅、そのほか自宅に準じる場所(企業が指定する場所にかぎる)など、テレワークを行う場所を記載します。



② 安全と健康の確保


テレワークを行う従業員にも、健康診断、ストレスチェック、長時間労働者への医師による面接指導など、法令に基づく健康確保措置を講じる必要があります。



③ メンタルヘルス対策


テレワークには従業員の心身の変調に気づきにくいという課題があります。健康相談できる体制の整備や、コミュニケーション活性化のための措置(定期的なオンラインミーティング等)の実施が望ましいとされています。



④ 作業環境の整備


自宅等でテレワークを行う際も、安全衛生に配慮した作業環境の整備が大切です。厚生労働省のガイドラインには、部屋の広さ・照明・温度など具体的な衛生基準が紹介されています。従業員へのチェックリスト配布などで自宅の環境を確認してもらう方法が実務的です。




⑤ 労働災害の補償──自宅でのケガも労災になり得る


テレワークを行う従業員にも労災保険法が適用されます。就業場所がオフィスでなくても、労働契約に基づき事業主の命令を受けて業務を行っている場合は「事業主の支配下にある」と考えられ、テレワーク中の災害は原則として業務災害の対象となります(私的行為など業務以外が原因のものは除く)。

なお、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務では、通勤災害が認められる場合もあります。




テレワーク導入チェックリスト


✓    テレワーク規程(または就業規則の改定)を整備したか

✓    雇用契約書・労働条件通知書に就業場所(自宅等)を明示したか

✓    労働時間の把握方法(客観的記録または自己申告+必要措置)を決めたか

✓    一斉休憩の適用除外が必要な場合、労使協定を締結したか

✓    中抜け時間の取扱いを就業規則等に定めたか

✓    時間外・休日・深夜労働のルール(事前許可制等)を定めたか

✓    長時間労働の防止策(メール抑制・アクセス制限等)を検討したか

✓    健康診断・ストレスチェック・面接指導の対象にテレワーク勤務者を含めているか

✓    コミュニケーション活性化・健康相談の体制を整えたか

✓    自宅の作業環境の確認方法(チェックリスト等)を準備したか




まとめ


テレワークは、育児・介護・治療との両立や人材確保に有効な働き方ですが、労働基準法・労災保険法などの法令はオフィス勤務と同様にすべて適用されます。特に労働時間の適正な把握、中抜け時間の取扱い、長時間労働の防止は、導入前にルール化しておくべき最重要ポイントです。

改正育児・介護休業法への対応としてテレワークを導入する場合は、措置ごとの要件(月10日以上など)も確認しましょう。

テレワーク規程の作成や労働時間管理の仕組みづくりに不安がある場合は、社会保険労務士へご相談ください。





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