【2026年度】最低賃金が全国加重平均1,177円に。企業がやるべき3つの対応

更新日:5 日前

56円引き上げは過去2番目の高さ。計算方法・除外される手当・支援制度まで解説
全国加重平均1,177円。前年度から56円の引き上げです。
2026年度の最低賃金改定について、47都道府県すべての地方最低賃金審議会の答申が出そろいました。引き上げ額は前年度の66円よりやや縮小したものの、1978年度の目安制度開始以来、2番目の高さとなっています。
最低賃金は、正社員・パート・アルバイトを問わず、すべての従業員に適用されます。下回った場合は差額の支払いが必要となり、罰則や企業名の公表に至るケースもあります。
本記事では、2026年度の改定のポイント、1時間あたりの賃金の計算方法、そして企業が取るべき3つの対応を整理します。
この記事でわかること ● 2026年度の最低賃金の動向(全国加重平均・最高額・最低額) ● 最低賃金制度の基本と罰則 ● 最低賃金の計算から除外される8つの賃金 ● 1時間あたりの賃金の計算方法(時給・日給・月給・歩合給) ● 減額の特例許可制度の対象者 ● 企業が取るべき3つの対応(確認・試算・支援活用) ● よくある質問(通勤手当・発効日をまたぐ勤務など) |
2026年度の最低賃金の動向
項目 | 2026年度 |
全国加重平均額 | 1,177円(前年度1,121円から56円引き上げ) |
引き上げ額の水準 | 1978年度の目安制度開始以来、2番目の高さ(前年度は66円) |
引き上げ幅の範囲 | 47都道府県すべてで54円〜65円 |
最高額 | 東京都 1,280円 |
最低額 | 宮崎県 1,085円 |
発効日 | 都道府県ごとに異なる(各都道府県労働局が決定・公示) |
【発効日は必ず自社の所在地で確認を】 最低賃金の発効日は都道府県ごとに異なります。「全国一斉に10月から」ではないため、必ず自社の事業場がある都道府県の労働局の公示を確認してください。複数の都道府県に事業場がある企業は、それぞれの発効日と金額を把握する必要があります。 |
最低賃金制度の基本
最低賃金制度とは、国が最低賃金法に基づき賃金の最低額を定め、企業にその額以上の賃金の支払いを義務付ける制度です。
項目 | 内容 |
適用対象 | 正社員・パート・アルバイトなど、雇用形態を問わずすべての従業員 |
合意の効力 | 最低賃金を下回る賃金を労使で合意しても、その部分は法律上無効となり、最低賃金額が適用される |
差額の支払い | 最低賃金を下回る賃金を支払っていた場合、差額の支払いが必要 |
罰則 | 最低賃金額以上を支払わない場合、50万円以下の罰金 |
是正に応じない場合 | 労働基準監督署の是正勧告に従わないなど、違反の態様によっては送検・企業名の公表に至るケースもある |
最低賃金の計算から除外される賃金
最低賃金の計算対象となるのは、毎月支払われる基本給や各種手当です。ただし、以下の賃金は計算から除外されます。
区分 | 除外される賃金 |
支払いが臨時的なもの | 慶弔手当など臨時に支払われる賃金 |
1か月を超える期間ごとの賃金 | 賞与など |
時間外・休日・深夜の割増部分 | 所定労働時間を超える労働への賃金、所定労働日以外の労働への賃金、22時〜5時の深夜割増賃金 |
特定の手当 | 精皆勤手当、通勤手当、家族手当 |
名称ではなく実態で判断します。たとえば「家族手当」という名称でも、扶養家族の有無・人数にかかわらず一律に支給している場合は、除外対象とならず最低賃金の計算に含めることがあります。判断に迷う場合は専門家にご相談ください。 |
1時間あたりの賃金の計算方法
最低賃金を上回っているかを確認するには、除外項目を差し引いたうえで、1時間あたりの賃金を算出して比較します。
給与形態 | 計算式 |
時給制 | 時給額 |
日給制 | 日給額 ÷ 1日の所定労働時間 |
月給制 | 月給額 ÷ 1か月平均所定労働時間 |
歩合給 | 歩合給 ÷ 当該賃金算定期間における総労働時間 |
▶複数の給与形態を組み合わせている場合
基本給+歩合給のように複数の形態で賃金を支払う場合は、それぞれの形態ごとに1時間あたりの賃金を算出し、合算額が最低賃金を下回っていないか確認します。
なお、月給制の場合は所定労働時間が計算の分母になるため、労働時間の正確な把握が前提となります。詳しくは「労働時間の適正な把握とは? 企業に求められる管理方法と判断基準」をご覧ください。
最低賃金の減額の特例許可制度
一般の従業員より著しく労働能力が低いなどの場合に、都道府県労働局長の許可を受けることで、個別に最低賃金の減額が認められる制度です。最低賃金を一律に適用した結果、かえって雇用機会が狭まることを防ぐ目的で設けられています。
No. | 減額特例の適用対象者 |
① | 精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者 |
② | 試の使用期間中の者 |
③ | 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者の内、厚生労働省令で定める者 |
④ | 軽易な業務に従事する者 |
⑤ | 断続的労働に従事する者 |
【該当するだけでは減額できません】 上記に該当するだけで減額が認められるわけではありません。それぞれに定められた許可基準を満たしたうえで、都道府県労働局長の許可を受ける必要があります。減額を検討する場合は、事前に管轄の労働基準監督署へご相談ください。 |
企業がやるべき3つの対応
対応①
最低賃金を下回る従業員の確認と賃金の見直し
まず、改定後の最低賃金を下回る従業員がいないか確認します。下回る場合は、最低賃金以上になるよう賃金を見直します。賃金額を変更する際は、労働条件通知書や賃金改定通知書などにより、変更後の賃金額を従業員に明示することが望まれます。
見落としやすいポイント 時給のパート・アルバイトだけでなく、月給制の従業員も確認が必要です。月給額を1か月平均所定労働時間で割ると、最低賃金を下回っているケースがあります。特に通勤手当や家族手当を含めた総額では上回っていても、除外項目を差し引くと下回る場合があるため注意してください。 |
パート・アルバイトの賃金を見直す際は、正社員との待遇差にも配慮が必要です。2026年10月施行の改正内容は「同一労働同一賃金が2026年10月に改正──パート・有期雇用のルールはどう変わる?」で解説しています。
対応②
人件費の増加額の試算
賃金が上がると、労働保険料や社会保険料の事業主負担も連動して増加します。最低賃金の引き上げにより人件費がどの程度増えるか、あらかじめ試算しておくことをおすすめします。
▶試算ツール
中小企業庁の「ミラサポplus」では、賃上げによる人件費への影響を試算できる「人件費増加額シミュレーション」が利用できます。
労働保険料の年度更新の仕組みについては「【2026年度】労働保険の年度更新とは? やり方と変更点を解説」をご覧ください。
対応③
賃上げ支援制度の活用
厚生労働省は、中小企業・小規模事業者の賃金引き上げに向けた支援施策紹介マニュアルを公開しています。業務改善助成金などの厚生労働省の支援策に加え、賃上げ促進税制や中小企業向けの各種補助金・融資制度も確認できます。
2026年度の助成金の改正ポイントは「【2026年度】押さえるべき助成金の改正ポイント4選」で解説しています。働き方改革推進支援助成金では、賃金引き上げによる加算が拡充されています。
最低賃金対応チェックリスト
✓ 自社の事業場がある都道府県の最低賃金額と発効日を確認したか
✓ 複数の都道府県に事業場がある場合、それぞれの金額・発効日を把握したか
✓ パート・アルバイトの時給が改定後の最低賃金を上回っているか確認したか
✓ 月給制の従業員についても1時間あたりの賃金を算出して確認したか
✓ 除外項目(通勤手当・家族手当・精皆勤手当等)を差し引いて計算したか
✓ 賃金を変更する従業員に、変更後の賃金額を書面で明示したか
✓ 賃上げによる労働保険料・社会保険料を含む人件費の増加額を試算したか
✓ 業務改善助成金など賃上げ支援制度の活用を検討したか
✓ 給与計算システムの時給・単価設定を発効日に合わせて更新したか
まとめ
2026年度の最低賃金は全国加重平均で1,177円、前年度から56円の引き上げとなりました。発効日は都道府県ごとに異なるため、自社の事業場所在地の公示を確認し、発効日に合わせた準備を進めることが重要です。
確認の際は、通勤手当・家族手当・精皆勤手当などの除外項目を差し引いたうえで、1時間あたりの賃金を算出する点に注意してください。月給制の従業員が最低賃金を下回っているケースは見落とされがちです。
賃上げは人件費の増加を伴いますが、業務改善助成金や賃上げ促進税制など支援制度も用意されています。制度を活用しながら、計画的に対応を進めましょう。
2026年に施行される労務関連の改正は、ほかにも複数あります。施行月別の一覧は「【2026年】労務の法改正まとめ──施行月別に企業の対応をチェック」でご確認いただけます。
よくある質問
Q. 通勤手当を含めれば最低賃金を上回りますが、問題ありませんか?
A. 通勤手当は最低賃金の計算から除外されるため、通勤手当を含めて判断することはできません。通勤手当・家族手当・精皆勤手当・賞与・時間外割増賃金などを差し引いた金額で、1時間あたりの賃金が最低賃金以上である必要があります。
Q. 月給制の社員も最低賃金のチェックが必要ですか?
A. 必要です。月給額を1か月平均所定労働時間で割った金額が、最低賃金額以上であるか確認します。月給制だから大丈夫と考えず、除外項目を差し引いたうえで必ず計算してください。
Q. 発効日をまたぐ勤務(夜勤など)はどう扱いますか?
A. 発効日をまたぐ勤務の取扱いなど実務上の細かい疑問については、厚生労働省の最低賃金特設サイトのFAQで確認できます。判断に迷う場合は、管轄の労働基準監督署へご相談ください。
Q. 本社と支店で都道府県が違う場合、どちらの最低賃金が適用されますか?
A. 最低賃金は、従業員が実際に働いている事業場の所在地の地域別最低賃金が適用されます。本社の所在地ではありません。複数の都道府県に事業場がある場合は、それぞれの地域の最低賃金額と発効日を確認してください。
Q. 最低賃金を下回っていたことが後から判明した場合はどうなりますか?
A. 差額を遡って支払う必要があります。また、労働基準監督署の是正勧告に従わないなど違反の態様によっては、送検や企業名の公表に至るケースもあります。発効日前に確認を済ませ、適正な支払いを行うことが重要です。
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この記事の監修者 大澤 直樹(特定社会保険労務士・AFP) 大澤労務管理事務所 代表。埼玉県川越市を拠点に、給与計算代行、就業規則の作成・改定、社会保険・労働保険の手続き、労務相談まで、中小企業の労務管理を幅広く支援しています。「めんどくさい」をまるっとサポートすることをモットーに、起業初期から成長期の企業に寄り添った実務支援を行っています。 |
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