同一労働同一賃金が2026年10月に改正|パート・有期雇用のルールはどう変わる?

更新日:3 日前

労働条件通知書の明示義務追加・
待遇差説明・福利厚生・正社員転換まで
実務対応を解説
パート・アルバイトを1人でも雇っている企業は、労働条件通知書の見直しが必要になります。
2026年10月1日から、パート有期法施行規則・同一労働同一賃金ガイドライン・雇用管理指針が改正されます。特に、労働条件通知書への明示事項の追加は義務であり、対応を怠ると10万円以下の過料の対象となるおそれがあります。
本記事では、3つの改正の内容と、施行前に企業が実施すべき実務対応を、優先順位をつけて整理します。
この記事でわかること ● 改正の背景(施行5年後の見直しと最高裁判決) ● パート有期法施行規則の改正──労働条件通知書の明示事項追加(義務・過料あり) ● 同一労働同一賃金ガイドラインの改正──待遇差の判断基準の明確化 ● 雇用管理指針の改正──福利厚生・正社員転換・待遇差説明 ● 施行前にやるべき5つの実務対応 ● 手当・福利厚生の点検で留意すべき視点 |
改正の背景──なぜ今、見直しなのか
働き方改革関連法には施行5年後の見直し規定が設けられており、同一労働同一賃金に係る規定の施行から5年が経過したことを受けて、見直しが検討されてきました。
「同一労働同一賃金」の施行後、非正規従業員の待遇改善は進んだものの、正社員との賃金等の格差は依然として残っています。また、近年は不合理な待遇差をめぐる最高裁判決が複数示されました。今回の改正は、こうした現状を踏まえ、雇用形態にかかわらない公正な待遇確保の取り組みをさらに強化するものです。
2026年10月改正の全体像──3つの改正
改正対象 | 主な内容 | 義務/推奨 |
① パート有期法施行規則 | 労働条件通知書等への明示事項の追加 | 義務 (過料あり) |
② 同一労働同一賃金ガイドライン | 待遇差の不合理性に関する考え方・具体例の大幅拡充 | 判断基準の明確化 |
③ 雇用管理指針 | 福利厚生施設の利用配慮、正社員転換の推進、待遇差説明の手法 | 義務+望ましい対応 |
① パート有期法施行規則──労働条件通知書の明示事項追加
パート・アルバイトや有期契約労働者を「雇い入れるとき」または「労働契約を更新するとき」に交付する書面(労働条件通知書など)に、新たな明示事項が追加されます。
【義務化される明示事項】 「正社員とのあいだの待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を書面で明示することが義務化されます。対応せず必要な明示を怠った場合、10万円以下の過料に処されるおそれがあります。 |
② 同一労働同一賃金ガイドライン──判断基準の明確化
待遇差の不合理に関する考え方や具体例が大幅に拡充されました。最高裁の判断基準がガイドラインへ取り込まれたことで、「どのような目的で支給されているか」「どのような場合に格差が不合理とされるか」の基準がより明確になっています。企業は、手当・賞与・退職金などの待遇差を「支給目的」に立ち返って説明できるようにする必要があります。
③ 雇用管理指針──3つの改正ポイント
ポイント | 内容 |
福利厚生施設の利用配慮 | 給食施設・休憩室・更衣室(従来から利用を認める義務あり)に加え、保育所、図書館、保養施設、駐車場などの利用にも配慮が必要に |
正社員転換の推進 | 転換制度を設けるとともに複数の転換措置を講じることが望ましいとされ、さらに「正社員への転換の意向」を確認し、意向に配慮することも求められる |
待遇差の説明 | 待遇差の説明を求められた場合の具体的な手法が提示。説明方法や、説明の求めがない場合の対応の検討が必要 |
施行前にやるべき5つの実務対応
対応① 労働条件通知書の見直し【最優先・義務】
現在、パート・アルバイトや有期契約労働者には「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4項目の書面明示が義務付けられています。10月からは、これらに加えて「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」の明示が必要です。
記載のポイント 単に「説明を求めることができる」と書くだけでなく、従業員が迷わず問い合わせできるよう、相談窓口の担当部署・担当者職氏名・連絡先(内線番号やメールアドレス)まで記載します。 |
対応② 待遇(賞与・退職手当・各種手当)の点検と支給目的の整理
ガイドラインの改正に基づき、賞与・退職手当・各種手当について、支給目的や支給要件の点検・整理を行います。正社員とのあいだで支給の有無や金額に差がある場合は、客観的な判断基準に照らして不合理でないかを検証します。
「なぜこの待遇に差があるのか」を、今まで以上に筋道を立てて説明できるようにしておくことが求められます。「パートだから」という雇用形態だけを理由とする説明は通用しません。
対応③ 福利厚生施設の利用範囲と公正な評価の点検
福利厚生施設にかかる規程を確認し、保育所・図書館・保養施設・駐車場などの利用基準を点検します。「パート・アルバイトという雇用形態だから」といった理由だけで利用を一律に制限する運用は、不合理な待遇差と判断されるおそれがあります。
また、パート・アルバイトや有期契約労働者の賃金は、職務内容や成果、意欲、能力等を公正に評価して決定することが望まれます。正社員と共通する職務については「雇用形態の枠を超えて共通する評価項目を設定する」などの仕組みづくりが一例です。
対応④ 正社員転換推進措置の整備
正社員転換の措置を講じるとともに、複数の措置を組み合わせることが望ましいとされています。あわせて、「正社員への転換の意向確認」の体制も整備します。
整備事項 | 具体例 |
転換措置 | 正社員転換制度の設置、正社員募集時の社内周知、社内公募での応募機会の付与 など複数の措置 |
意向確認の方法 | 労働契約の更新時の面談、電子メール等の活用 |
現場との連携 | 管理職が面談を行う場合、意向確認を適切に行えるよう管理職への周知徹底が不可欠 |
▶助成金の活用
正社員転換にはキャリアアップ助成
金(正社員化コース)を活用できます。2026年度は情報公表加算(20万円)も新設されています。詳しくは「【2026年度】押さえるべき助成金の改正ポイント4選」をご覧ください。
対応⑤ 待遇差説明の方法の検討
待遇差の説明を求められた場合に備え、説明方法を検討します。説明は資料を活用した口頭説明が基本ですが、わかりやすい資料の交付による方法も考えられます。
事前準備がカギ 説明を求められてから資料を作成するのではなく、あらかじめ待遇差の説明資料や、自社の賃金制度・福利厚生の比較一覧表を準備しておくことをおすすめします。また、説明を求められない場合でも、労働契約の更新時などに「資料交付」や「説明を求めることができることの周知」を行うことが望まれます。 |
その他の留意事項
留意事項 | 内容 |
職業能力開発促進法の適用 | パート・アルバイトや有期契約労働者にも適用されるため、職業訓練の実施やキャリアアップの支援に努める |
過半数代表者の選出適正化 | パート・有期雇用労働者に関する就業規則の作成・変更時は、その過半数代表者から意見を聴くよう努める |
労使の話し合いの促進 | 定期的な懇談会の開催など意見交換の方法を工夫し、現場の不満や紛争リスクを未然に防ぐ |
情報の公表 | 正社員転換制度の内容・実績の明示に努め、定期的に自社サイトなどで公表することが望ましい |
従業員のスキルアップ支援については「教育訓練休暇給付金とは? 企業が整備すべき休暇制度と申請の流れ」で、学び直しを支援する新制度を解説しています。
「また、派遣労働者を受け入れている企業は、同日施行の派遣版の改正にも対応が必要です。派遣先企業に求められる情報提供義務や福利厚生の配慮については『派遣労働者の同一労働同一賃金が改正──派遣元・派遣先それぞれの実務対応』をあわせてご確認ください。
【同日施行の改正に注意】 2026年10月1日は、カスタマーハラスメント対策の義務化も同時に施行されます。あわせて準備を進めましょう。詳しくは「カスハラ対策が企業の義務に──2026年10月までに整えるべき実務対応」をご覧ください。 |
また、2026年10月には社会保険の適用拡大(106万円の壁の撤廃)も施行されています。パート・アルバイトの社会保険加入に影響する改正のため、「106万円の壁が撤廃──社会保険の適用拡大で企業がやるべきこと」もあわせてご確認ください。
2026年10月1日までの対応チェックリスト
✓ 労働条件通知書に「待遇差の説明を求めることができる旨」を追加したか【義務・過料あり】
✓ 相談窓口の担当部署・担当者・連絡先まで通知書に記載しているか
✓ 賞与・退職手当・各種手当の支給目的と支給要件を整理したか
✓ 正社員との待遇差について、不合理でないことを筋道立てて説明できるか
✓ 福利厚生施設(保育所・駐車場等)の利用基準を点検したか
✓ 正社員転換制度を設け、複数の転換措置を講じているか
✓ 正社員転換の意向確認の体制(面談・メール等)を整備したか
✓ 待遇差の説明資料・比較一覧表を事前に準備したか
✓ 就業規則の変更時にパート・有期雇用労働者の過半数代表者から意見を聴く運用になっているか
✓ 同日施行のカスハラ対策義務化への準備も進めているか
まとめ
2026年10月1日施行の改正は、労働条件通知書の明示義務(過料あり)という「必ずやるべきこと」と、待遇点検・正社員転換・説明体制という「準備すべきこと」の両方を含んでいます。特に労働条件通知書のフォーマット変更は、パート・アルバイトを1人でも雇用しているすべての企業に関係します。
待遇差の合理性検証は判断に迷う場面も多く、今後、厚生労働省から具体的な解釈や事例を示す通達が出されると予想されます。各都道府県の働き方改革推進支援センターや労働局の相談窓口の活用も有効です。
労働条件通知書の見直しや待遇差の点検に不安がある場合は、社会保険労務士へご相談ください。
2026年に施行される労務関連の改正は、ほかにも複数あります。施行月別の一覧は「【2026年】労務の法改正まとめ──施行月別に企業の対応をチェック」でご確認いただけます。
同一労働同一賃金対応・就業規則整備のご相談は大澤労務管理事務所へ |
「労働条件通知書のフォーマットを改正に対応させたい」 「手当や賞与の待遇差を点検したい」 「正社員転換制度を整備したい」 大澤労務管理事務所は、埼玉県川越市を拠点に、 中小企業の雇用管理・就業規則整備をサポートする 社会保険労務士事務所です。 労働条件通知書の見直しから待遇差の点検、正社員転換制度の設計まで、 経営者に寄り添った実務支援を行っています。 まずはお気軽にご相談ください。 初回のご相談は無料です。 ▶ お問い合わせはこちらから |
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